「メトロポリタン・オペラハウス」は、白いトラバーチンの五つのアーチを持つファッサードで、ホワイエの壁に掛けられたマルク・シャガールのタペストリーがガラススクリーンを透して見えるので、夜は特にすばらしいです。ここで何回かオペラを見たことがありますが、チケットは日本のような高価ではありません。公演にはたいへんな費用がかかるオペラですが、多くが寄付によって賄われていると聞きます。座席数は三、八〇〇席。一階の座席とそれを囲む五層のバルコニー席があります。座席に着くと前の席の背もたれに英文の字幕が表示されます。黄金のプロセニアムは縦、横幅ともに、一六メートルあります。
バックステージを見学するツアーがあって参加したことがあります。そこでオペラハウスは普段目にすることのない巨大なスペースが必要なのだと実感しました。ステージの広さと同じスペースが、上下左右とバックに必要なこと。楽屋にしても個室にはグランドピアノを備えるスペースが必要です。リハーサル室、トレーニング場などのほか、さまざまな衣装や舞台装置をつくるところ、それらを保存する場所が必要です。それでも収まりきらないので、外部に倉庫を持っているとのことでした。
左側にある「ニューヨーク州立劇場」はフィリップ・ジョンソンの設計。一九六七年に完成し、現在ニューヨーク・シティ・バレエ団の本拠地になっています。また右側にある「エイヴリー・フィッシャー・ホール」は一九六二年に完成し、現在、ニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地になっています。
私が一九七七年に初めてアメリカ旅行をしてここを訪れた時、夕方になってジャズコンサートがあることがわかり、チケットを買おうとしましたが既に売り切れ。それでもあきらめきれずにウロウロしていたら、青年がやってきて、チケット要らないかといってきました。一瞬ダフ屋かと思って警戒しましたが、値段を聞くとそんなに高くありません。彼が買った値段で譲ってくれたのでした。念願かなって、ニューヨークで生のジャズ演奏を聞くことができて大感激したことを思い出します。
森川 浩弌郎(もりかわ・こういちろう)
1960年 大阪市立都島工業高等学校卒業/1960年 大阪で圓堂建築設計事務所に入所/1962年 圓堂建築設計事務所東京に移転にともない東京に移転/1966 - 1968年 圓堂建築設計事務所勤務中、中村順平先生に師事する/1991 - 1997年 YENDO ASSOCIATES INC.ニューヨーク事務所に勤務/現在、米国コネチカット州に在住
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