令和6年 新春賀詞交歓会開催
令和6(2024)年1月31日(水)@明治記念館
文:鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会委員長・墨田支部)、佐賀井 尚(東京都建築士事務所協会理事・広報委員会委員長・世田谷支部)
写真:大平 孝至(東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部)
副会長と共に挨拶する千鳥義典東京都建築士事務所協会会長。
丸川珠代参議院議員・東京都建築士事務所協会顧問
宇田川聡史東京都議会自由民主党・都議会自民党建築事務所政策研究会副会長
川松真一朗東京都議会自由民主党政務調査会長
東村邦浩都議会公明党幹事長
たきぐち学都民ファーストの会東京都議団幹事長
西沢けいた東京都議会立憲民主党幹事長
児玉耕二日本建築士事務所協会連合会会長による乾杯の発声。

 明治記念館「蓬莱の間」にて新春賀詞交歓会が開催された。新型感染症に怯え感染対策を気にする声はもうない。実に4年ぶりの今まで通りのお祝いの場となるはずであったが、元日に発生した大地震の惨状がふと脳裏をよぎると、誰もが心からお祝いできないという複雑な心情にさせられる。亡くなられた方々への黙祷が捧げられた後、永池雅人副会長の開会の辞が述べられ、正副会長が登壇し会長の挨拶となった。

千鳥義典会長挨拶(要約)
 元旦に発生した能登半島地震の甚大な被害状況が連日報道されている。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに被災されたみなさまにお見舞いを申し上げます。そして被災地の一日も早い復旧、復興をお祈りいたします。このような状況においては賀詞交歓会の中止も頭をよぎったが、コロナウイルスが5類となって初めて迎える新年ということもあり、また、志を同じくする被災地の仲間を励ます意味も込めて開催を決断した。地震で倒壊した建物の映像を見るにつれ、自然災害の恐ろしさと日頃の防災への備えの重要性を再認識させられる。建築を職能とするわれわれに何ができるのか? 建築が持つ力とは何か? そのような考えを巡らせる毎日となっている。
 唐突ではあるがウィトルウィウスをご存じだろうか? 古代ローマ時代の建築家で、建築に関する最も古い書物である『建築書』を執筆したといわれている人物である。彼はこの書物の中で、建築が備えなければならない3つの条件として、用(使いやすさ・機能性)、強(安全性・耐久性)、美(デザイン・魅力)を唱え、これらの要素を兼ね備えなければならないと書いている。視点を変えると、建築にはこの3つの力があるといえる。生活を快適にする力、人の命を守る力、人を感動させる力である。建築設計を生業とするわれわれは、この力を発揮し実現へと導くことができる。これは建築を志す者の原点であり役割、使命でもある。あらためてこの建築の原点に立ち返り、強い使命感を持って協会活動に取り組んで参る所存である。
 いまわれわれ建築士事務所は、脱炭素化を背景とした建築基準法や省エネ法の改正、また、デジタル化による業務効率の急速な進展、さらに技術者、技能者の担い手不足や建設工費の急激な上昇など、取り巻く環境は年々厳しさを増しているが、東京都建築士事務所協会会員一同、強い使命感をもって、東京の快適で安全で美しいまちづくりに貢献して参る決意である。
来賓挨拶
丸川珠代参議院議員・東京都建築士事務所協会顧問
 能登半島で被災された皆様方へ心からのお見舞い申し上げます。亡くなられた皆様には心からの哀悼の誠をささげたいと存じます。能登半島が厳しい思いをしている時だからこそ、東京にいるわれわれがしっかり力強く私たちの業界を引っ張っていこう、そんな思いであります。
 若い人材を希望溢れる思いでこの業界に招き入れたい。東京の街をより強靭で快適でそして美しく魅力的な建築物で次の世代に引き渡していきたい。
 昨年来から報酬基準の見直しを議論して参りました。すべての建物の省エネ基準適合義務化に対応する業務報酬の見直し、戸建て住宅、複数の難易度の業務量の算定見直しを行っています。
 若い人材の登用、建築DX、設計分野におけるBIMの推進、昨年度は60億円の補助金を付けて、中小事業者の皆様へこの費用を見て差し上げた。さらなる加速化をしたい。
 物価高、資材高の中で、適正な報酬が得られるそのような環境の中で、業界全体が成長していくことを目指して、私どもも共に頑張って参りたいと思います。
東京都議会自由民主党 宇田川聡史都議会自民党建築事務所政策研究会副会長
 石川県のみならず、富山県では津波によって建物が被災し、港が使えない状態になっている。新潟県では液状化現象によって建物が使えない状態が続いている。
 しかし、やはり最も深刻なのは石川県です。石川県の耐震化率は半分ぐらいです。りっぱな瓦屋根の家が多いため建物の倒壊につながっている。それが原因のひとつと聞いている。
 一方東京都では住宅に限っては耐震化率95%を超えている。東京都もいつ大きな地震が来てもおかしくない状況にある。耐震化が進んでいるからといっても安全ではありません。東京では火災による消失が危惧されている。都議会としては、壊れにくい街、燃え広がらない街を政策として進めてまいりたい。
東京都議会自由民主党 川松真一朗政務調査会長
 もう一度皆様方の街を守るためには意識を高める必要があると強く感じている。
 街づくりだけではなく、しっかりした仕事にはしっかりとした利潤が生まれるようにしなければならない。
都議会公明党 東村邦浩幹事長
 今回の地震で改めて教訓をいただいた。それは、倒壊した建物が道をふさいだ場合、現地にたどり着けない。救える命も救えない。緊急輸送物資も運べない。東京都では緊急輸送道路沿道建築物の耐震診断、改修の助成をして参りました。5%でも残っているとその先に救助に行けない。もう一度最後の最後までやって行かなければならない。行政とともにこの問題を進めていきたい。不燃化特区、特定路線整備は待ったなしです。これをやることで7割の延焼が遮断できます。これをやっていかなければ、東京の安心安全な街づくりはできない。
 またカーボンニュートラル、脱炭素、省エネ、再エネ、安全安心な街づくりを行政も含めて取り組んでいきたい。
都民ファーストの会東京都議団 たきぐち学幹事長
 地方ではまだ耐震化が進んでいない。改めて耐震化の必要性を感じている。2000年以前のグレーゾーン住宅への助成も進めている。省エネ、再エネマンション初期費用、相談窓口設置、既存住宅流通促進のためのインスペクションを進めていきたい。安心安全な東京都の魅力ある都市づくり進めていきたい。
東京都議会立憲民主党 西沢けいた幹事長
 2000年グレーゾーン、既存住宅活用の課題が大切と考えている。東京都内の既存住宅をどのように活用していくのか。既存住宅活用には、建築士の能力が必要、補助の活用、報酬の見直しが必要と考えています。
乾杯、懇親会、中締め、閉会
 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会の児玉耕二会長の乾杯の発声で懇親会が始まった。
 昨年は、新型感染症による自粛で滞った支部活動をどのように元通りにしていくかについての話題が多く聞かれたが、今年の話題の中心はやはり能登半島地震である。報道された衝撃的な映像の数々、被災地の現状、政府の復興方針などへの一般論から、建物倒壊のメカニズム、キラーパルス、グレーゾーン建物への対応の加速化、法改正の可能性など、専門家としての議論が交わされた。楽しく飲んでいながらも、誰もが心は被災地に寄り添っているように感じた。
 そんな中、会場の中央部で華やかな賑わいが繰り広げられていた。特別講演をされた永山祐子さんと名刺交換をする行列ができていたのである。多いときは10名程度が順番を待っていた。彼女は新宿支部の会員ではあるが当会の催しに参加するのは初めてとのこと。終始にこやかな表情で、歓談、写真撮影などを閉会まで飲食せず対応されていた。著名ゆえの試練というべきだろうが脱帽である。われわれ会員にとっても大きな励みになるので、これを機に、本会の催しや支部活動に顔を見せていただけることを願いたい。
 その後、結びに、大内達史名誉会員の音頭で中締めされ閉会となった。
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
東京都建築士事務所協会理事・研修委員会委員長・会誌専門委員会委員長・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社/現在、同代表取締役
佐賀井 尚(さかい・たかし)
東京都建築士事務所協会理事・広報委員会委員長・世田谷支部、有限会社尚建築工房
1956年 栃木県生まれ/1980年 武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、(株)ランド計画研究所勤務/1990年 尚建築工房設立/1998年 有限会社尚建築工房に改組
大平 孝至(おおひら・たかし)
東京都建築士事務所協会会誌専門委員会副委員長・台東支部、株式会社ダイリン一級建築士事務所
1984年 東京電機大学建築学科卒業/株式会社ダイリン一級建築士事務所勤務。マクドナルド、松屋、鳥貴族等、チェーン展開の飲食店の建築設計及び店舗デザイン設計をする