思い出のスケッチ #327
GRAND CENTRAL TERMINAL
森川 浩弌郎(元YENDO ASSOCIATES INC.、米国コネチカット州在住)
 マンハッタンにはふたつの鉄道ターミナルがあります。ひとつは、ロングアイランドの通勤電車とアムトラック(長距離旅客列車)が走るペンシルバニア駅。もうひとつが、メトロノースの通勤電車が走るグランド・セントラル駅です。今回のスケッチの対象であるこのターミナルには、ハドソン・ライン、ハーレム・ライン、ニューヘブン・ラインの3線の発着番線があります。
 現在の駅舎は、1913年に「グランド・セントラル・ターミナル」として開業した三代目の建物です。1966年に高層ビルに建替える計画がありましたが、ニューヨーク市やジャクリーヌ・ケネディ・オナシスらの尽力によって歴史的建造物として保存されることになり、1998年に内装をやり替えてリニューアル・オープンしました。
 内部は、大聖堂のように壮大なコンコースになっていて、46の発着番線に継がっています。改札口はありません。床が大理石で敷き詰められたメイン・コンコースの真ん中に円形のインフォメーション・ブースがあり、その屋根の金色の丸い時計がランドマークになるのでしょう。誰もが「時計の下で会いましょう」というほど待ち合わせ場所の定番スポットになっています。
 メイン・コンコースの緑色のヴォールト天井は、金箔で星座が描かれ、さらに2,500個の星々が描かれ、照明で輝いています。
 このターミナルの北側がメトライフビル、駅の正面となる南側がパークアベニューです。正面上部の銘板の上には、鉄道の美徳を表すギリシャの神々(スピードの神メルクリウス、強さの神ヘラクレス、知恵の女神ミネルバ)の彫刻で装飾された丸いティファニー時計が付いています。直径4.2メートル。文字盤にステンドグラスが嵌められていて、6時の部分には時計のメンテナンスのために、外部から入れるようになっています。改修の時にその部分に入れてもらったことがありますが、ひとつの文字は人がひとり入れるほどの大きさがあります。ティファニーのガラス製品としては世界最大だそうです。
 スケッチは、パークアベニューから正面を描いています。通りは建物にぶつかって左右に分かれています。このレベルではコンコースに行けません。コンコースに行くには手前で下のレベルに行く道路で下り、四二丁目の通りに出て、パークアベニューの陸橋下の入口から入ります。コンコース周りには、切符売場のほか、レストラン、バー、マーケット、交通博物館、本屋、酒屋、土産物屋、催し会場があり、通勤客や観光客で賑わいます。
森川 浩弌郎(もりかわ・こういちろう)
1960年 大阪市立都島工業高等学校卒業/1960年 大阪で圓堂建築設計事務所に入所/1962年 圓堂建築設計事務所東京に移転にともない東京に移転/1966 - 1968年 圓堂建築設計事務所勤務中、中村順平先生に師事する/1991 - 1997年 YENDO ASSOCIATES INC.ニューヨーク事務所に勤務/現在、米国コネチカット州に在住