思い出のスケッチ #326
ST. BARTHOLOMEW'S CHURCH
森川 浩弌郎(元YENDO ASSOCIATES INC.、米国コネチカット州在住)
 グランドセントラル駅からパークアベニューを歩いて、事務所のあるシーグラムビルに通勤する途中、周りが近代的な高層ビルで囲まれた谷間に、このセント・バーソロミュー教会があります。ロマネスク様式のライムストーンの角石で縁取られた、淡い赤煉瓦づくりの落ち着いた感じのする建物で、ビザンチン様式のドームが美しい監督教会です。
 この教会の初代は、一八三五年にマンハッタンのダウンタウン、バワリーに建設され、二代目は、一八七二年にマジソンアベニューの四四丁目に場所を移して建設されました。一九一六年に現在の場所、パークアベニューの五〇丁目と五一丁目の間にバートラム・G・グッドヒューによる設計で建設開始されましたが、一九二四年に突然グッドヒューが亡くなってしまいます。その後、彼の事務所のパートナーが引き継ぎ、隣接するコミュニティハウスを含めて一九三〇年にこの教会は完成しています。美しい彫刻のある玄関の部分(一九〇三年)は、マッキム・ミード&ホワイト設計の二代目のものを移設したものです。コミュニティハウスと教会は、二〇一六年にナショナル・ヒストリック・ランドマークに指定されています。
 五〇丁目の角の部分は、オフィス街に安らぎを与える美しい緑と花が咲く空間です。ここにはコミュニティハウスのレストランがあり、テーブルが並ぶ屋外のテラスには、ビジネスマンや観光客がランチやディナーを楽しむ姿が見られます。
 この教会で特筆すべきは、ニューヨークで最大のパイプオルガンを持つことです。世界の一〇大パイプオルガンのうちのひとつにも数えられています。音楽活動も活発です。オルガン奏者のデヴィッド・マッキンレイ・ウイリアムズをヨーロッパから聖歌隊指揮者に招聘したり、世界的に有名な指揮者のレオポルド・ストコフスキーも、その合唱団を指揮しています。
森川 浩弌郎(もりかわ・こういちろう)
1960年 大阪市立都島工業高等学校卒業/1960年 大阪で圓堂建築設計事務所に入所/1962年 圓堂建築設計事務所東京に移転にともない東京に移転/1966 - 1968年 圓堂建築設計事務所勤務中、中村順平先生に師事する/1991 - 1997年 YENDO ASSOCIATES INC.ニューヨーク事務所に勤務/現在、米国コネチカット州に在住