思い出のスケッチ #294
ハロン湾
根本 利英(根本建築設計事務所、東京都建築士事務所協会南部支部)
 東京都建築士事務所協会南部支部の研修旅行で、二〇一四年一一月一三〜一六日、ベトナムのハノイとハロン湾を訪れました。
 ハロン湾はベトナム北部のトンキン湾北西部にある湾。クアンニン省のハロン市の南に位置し、カットバ島のほか大小三、〇〇〇もの奇岩、島々が存在します。伝承では中国がベトナムに侵攻してきたとき、竜の親子が現れ敵を破り、口から吐き出した宝石が湾内の島々になったとされています。
 カットバ島以外の島は、現在は無人ですが、約七、〇〇〇年前の新石器時代にわずかに人が住んでいて、数世紀前までは海賊の隠れ家として、またモンゴル軍の侵攻の際には軍事的に利用されたようです。
 墨絵のような島々の景観は、太陽の位置によって輝きが変化し、雨や霧によって趣のある雰囲気を醸し出します。地質学的には北の桂林から南のニンビンまでの広大な石灰岩台地の一角で、石灰岩台地が沈降し、侵食作用が進んで現在の姿になりました。
 一九九四年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された美しい湾のクルーズでは、ライトアップされたティエンクン鍾乳洞への立ち寄り、船上での食事、そして島々のスケッチができました。
根本 利英(ねもと・としえい)
株式会社根本建築設計事務所取締役社長、東京都建築士事務所協会南部支部 副支部長
1947年 福島県生まれ/日本大学付属東北工業高校建築科卒業/1977年 株式会社根本建築設計事務所設立