外装塗材のトレンド
塗料の歴史で最も原始的な塗料といえるものは、アルタミラ洞窟壁画に見られる1万年以上前の塗装ではないでしょうか。最初は顔料を壁になすりつけただけのものでした。1300年前頃になると高松塚古墳壁画のように無機顔料と松ヤニの混合物の塗料が使用されています。現在の塗料の原形とも言える樹脂(松ヤニ)が登場します。どちらも太陽の紫外線や風雨にさらされない状況だったからこそ、現代に至るまでその色柄が保存されていたと考えられます(図1)。
つまり塗料にとって太陽光と風雨が、いかに劣悪な環境であるかお分かりいただけると思います。
その後、顔料と特に樹脂が長足の進歩を遂げ、現在においては塗材の耐候性はもちろんのこと、汚れに負けず長期的メンテナンスの点においても優れた外壁塗料の需要が高くなっています。
最近では塗装工程で完了するのではなく、たとえば車のワックスのように、塗装面もクリアコーティングによって保護するフッ素クリアコーティング、光触媒コーティング、シリコンクリアコーティングのような製品がトレンドになりつつあります。
耐候性からみる塗料のランクについて
【顔料】塗料の耐候性には顔料との関係もあります。一般的に耐候性の良い顔料は発色としてはくすんだ色が多い傾向になります(図2)。
【水性/油性(溶剤系)】
そもそも水性塗料というものは、本来溶剤系の樹脂が乳化剤で無理やり水に溶かされている状態なので(図3)、水性塗料と油性(溶剤系)塗料の耐候性比較では、超長期の防食性を期待される重防食分野等は必ず油性ですし、耐候性・耐水性においては油性が圧勝です。しかし施工中や施工後の有機溶剤臭や引火性において取り扱いが難しい点が特に街中では敬遠されるので、現在外装においても水性塗料が好まれる傾向です(図4)。
【架橋】
塗料は架橋成分により性能がガラリと変わります。それ故に架橋成分の名前が付くこともあります。たとえば、いわゆるウレタン塗料とシリコン塗料。これらはどちらもアクリル主鎖ですが、架橋の部分がウレタン架橋かシリコン架橋かの違いです(図5)。
架橋の結合が最も強いのがフッ素樹脂。だからフッ素が超耐候性塗料といわれるのです。
【フッ素樹脂塗料】
実はフッ素樹脂にも色々な種類があり、フッ素の含有量もさまざまです。テフロン(フッ素含有量76%)、テドラー(41%)、カイナー(59%)、ルミフロン(22%)など。ルミフロンは塗料用に多く使われています(図6)。
光触媒塗料について
光触媒反応(酸化チタンの表面で水が光エネルギーにより電気分解される)は、1967年、東京大学の本多・藤島教授によって発見されました。光触媒反応のふたつの特徴は、「有機物の分解」と「超親水性」です。それを外壁用塗料に利用したのが始まりです。紫外線があたることで光触媒が壁についた汚れを分解し、表面の超親水性によって雨水が壁の汚れの下に入り込み、浮き上がらせて流れとともに流します。このセルフクリーニング機能が繰り返され、建物を汚れから長期間守ることができるのです(図7)。
酸化チタンをどのように分散させて光触媒反応効率を上げるかには各社さまざまな違いがあります(図8)。
【低汚染塗料との比較】
どちらも親水性により汚れを洗い流せるということになりますが、低汚染塗料には汚れの分解機能はないため、経年で徐々に汚れが積もってきます(図9)。
【室内用光触媒コーティング】
外壁塗料として始まった光触媒塗料は今や室内用としても活用されています。
内装分野は、ウィルスや菌の不活性化、抗菌、防臭という機能において今後の使用範囲の拡大が見込まれます(図10)。
打ち放しコンクリートの美観再生と維持
【コンクリート保護コーティングの問題点】
(1)従来の浸透性吸水防止材の問題点
従来の浸透性吸水防止材には、主にシラン系と樹脂系に分類されます。
シラン系は、安価であることから一般的によく採用されていますが、浸透性は高いが揮発しやすく吸水防止層が低密度、初期効果のみで長期的な保護効果が期待できない、といった問題点があります。
また、樹脂系には、造膜により美観を損なうこと、コンクリートとの長期密着性に懸念があり、降雨時の濡れ色が目立つ問題がありました。
そこで、含浸して造膜する「フッ素シラン型吸水防止剤」が上記問題点の解決に適しています。従来の浸透性撥水材の寿命が数年程度といわれる中、フッ素樹脂による20μmの厚膜を形成し、コンクリートの中性化も防止します(図11 N-RCシステム)。
(2)撥水材と光触媒コーティングとの相性
無機系光触媒塗料の中には、直接コンクリートへ塗布するものもありますが、コンクリート保護効果が期待できません。また、撥水材がコートされている場合、光触媒塗料が密着せず、双方の組み合わせが難しいことが問題でした。
撥水層から光触媒コーティングまでの密着を担保した一貫施工をすることで、下地保護+防汚機能を併せ持ち、打ち放し建物の美観を長期間維持することが可能です(図11 N-RCシステム)。
【打放コンクリート描画改修工法】
打ち放しコンクリート描画改修工法の工程は以下です。①高圧洗浄→②G-PFプライマー→③G-PFベース→④G-PF模様描画(フッ素樹脂描画塗装:模様付け)→⑤フッ素樹脂クリア+光触媒コーティング。
この工法のポイントは、新築時のデザインを自然な風合いで再現できることにあります。防水機能を持つ弾性塗膜でコンクリートを保護した上に、耐候性を考慮し、フッ素樹脂系の塗料を採用しています(図12 G-PFシステム)。
そして光触媒コーティングで施工後も長期美観を保ち、汚れに負けない外壁にしておくことが肝心です。
廣瀬 直輝(ひろせ・なおき)
株式会社ピアレックス・テクノロジーズ代表取締役社長
1973年 大阪生まれ/2006年 株式会社ピアレックス・テクノロジーズ入社/2008年 取締役就任/2018年 東京営業所専任/2022 代表取締役社長就任/入社後一貫して設計事務所へのスッペックイン営業から現場施工管理に従事
1973年 大阪生まれ/2006年 株式会社ピアレックス・テクノロジーズ入社/2008年 取締役就任/2018年 東京営業所専任/2022 代表取締役社長就任/入社後一貫して設計事務所へのスッペックイン営業から現場施工管理に従事
カテゴリー:構造 / 設備 / テクノロジー / プロダクツ
タグ:テクノロジープラス