はじめに
平成12(2000)年の建築基準法抜本改正から16年が経ちます。建築基準の性能規定化に伴い、工法や材料は法で性能が定義されました。政令でその技術的基準が示されることになり、従来から用いられている一般的な工法や材料は告示に移行しましたが、個別認定における仕様や規格の取り扱いが厳格化されている中で、経験上の仕様決定が思わぬトラブルに繋がることがあります。今回、改めて一般的に採用されている外壁材の規格を確認することで、求められる必要性能と特性を認識していただき、コスト、品質、維持管理等を鑑みた材料を、意匠に応じて選択していただければ幸いです。多数ある材料のすべてを紹介することは難しいですが、代表的な材料を紹介し、意匠設計に応じた効率的で高品質な外壁材選定に役立てていただけることを願っています。
詳細については、「日本建築学会建築工事標準仕様書 JASS 27 乾式外壁工事」(JASS 27)や、日本工業規格A部門「JIS A 5422」等の関連資料を合わせてお読みいただくと共に、認定資料および別添資料を参照してください。
外壁の分類
ここで取り上げる乾式外壁材は、超高層建築物と鉄筋コンクリート造を除く、高さ31m以下の建築物に一般的に採用されている構造耐力を負担しない非耐力壁の外壁で、JASS 27では下記のように分類されています。(1) ALC薄形パネル(以下、ALC)
規格:JIS A 5416 規格名称:軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)
(2) GRCパネル(以下、GRC)
規格:日本GRC工業会団体規格による耐アルカリガラス繊維(ZrO2含有量16%以上のもの)
(3) 押出成形セメント板(以下、ECP) 規格:JIS A 5441
(4) 繊維強化セメント板(スレート)(以下、SKC)
規格:JIS A 5430(繊維補強圧縮成形)
(5) 複合金属サイディング(以下、KSD)
規格:JIS A 6711の12mm〜25mmの複合成型板
(6) 窯業系サイディング(以下、YSD)
規格:JIS A 5422
この分類の他に、PC版、カーテンウォール(以下、CW)も外壁に採用されています。
仕様決定における意匠性、コスト、施工条件、耐久性等の判断基準において、それぞれに製品規格が定められています。一般的にはJIS認定工場で生産され、求められる品質管理規格があり、その条件のもとで各製造メーカーが素材の特性に応じて独自の品質基準を定めて生産しています。
素材の本質的な特性を認識することにより、各製造メーカーが表記している特性と特徴が、求める外壁仕様に適しているかを捉えてください。製造メーカーによる製品の技術・品質情報が、品質管理規格に定められた品質の表示と異なることも少なくありません。カタログ等の告知資料や経験的知識に惑わされずに仕様選定をしてください。
外壁材の概要
JASS27で分類されている外壁材の多くはセメント製品で、製品寸法を規格化することで汎用性を高め、コスト削減、安定品質の確保、工期短縮をはかっています。主な材料の概要を下記にまとめました。
(1)ALC薄形パネル
ALCは “Autoclaved Lightweight aerated Concrete” (高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)の頭文字をとって名付けられた建材で、板状に成型したものを「ALCパネル」と呼びます。
ALCの製造技術は1962年にヨーロッパより日本国内に導入されました。以来50年、品質や意匠面でのユーザーの高い要求に応えることでALCパネルは発展を遂げ、今や超高層ビルから一般住宅にいたるまで、現代建築に欠かせない材料として位置づけられています。
製品は幅600mmが標準で、厚さが75mm以上の厚形パネルと、50mm以下の薄形パネルに大別され、それぞれに平パネルと表面にデザイン加工を施した意匠パネルがラインナップされています。厚形パネルは主に鉄骨造の住宅・ビル・工場など、薄形パネルは鉄骨造あるいは木造の専用住宅・低層建築物などと、建築物の構造や規模、用途に応じて使い分けられています。
【製造工程概要】
原材料調合(珪石・セメント・生石灰・アルミ粉末・水)
↓
鉄筋加工・組み込み
↓
注入・発泡
↓
切断
↓
オートクレーブ
↓
加工・側面・表面
↓
検査・保管・出荷

左:75mm以上のALC厚形パネル。右:50mm以下のALC薄形パネル。 *1
【製造工程概要】
GRCの製造方法は、高強度パネルに適したダイレクトスプレー法と、量産化に対応したプレミックス法が主流です。

ダイレクトスプレー法の製造工程。 *2
押出成形セメント板 (Extruded Cement Panel) は、主として中高層の鉄骨建築物における外壁および間仕切壁に用いる材料で、セメント、けい酸質原料、繊維質原料を主原料として、中空のある板状に押出成形しオートクレーブ養生したパネルです。

押出成形セメント板(左) *3と施工事例(撮影:筆者)。

製造工程。 *3
繊維強化セメント板は、わが国で製造され始めてから90年以上の歴史を持つ建材です。JIS A 5430に規定する、スレート波板、スレートボード、けい酸カルシウム板(けいカル板)の3品目に大別され、外壁としてはスレート波板が使用されています。国土交通大臣の不燃認定を取得し、多くの防火・準耐火・耐火構造や遮音構造認定を取得していますが、材料形状が限られることから主に工場等の外壁材料として使用されています。

JIS A 5430における繊維強化セメント板の分類 *4
複合金属サイディングとは、成型・エンボス加工された金属板と裏打材(硬質プラスチックフォーム、せっこうボード、ロックウール化粧吸音板など)によって構成された乾式工法の外壁材です。*5
一貫した製造ラインで工場生産され、仕上がりが均一、取り付けが容易、塗装仕上げが不要等の特徴を持つ外装建材です。とても軽量で建物に優しく、断熱性に優れ、省エネ効果抜群、ひび割れ・凍害に強いといった特徴を持っています。
金属板として多く用いられるガルバリウム鋼板とは、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板のことで、アルミニウムを55%含んだめっき鋼板です。アルミニウムの耐久性と亜鉛の犠牲防食作用を併せ持つ優れた鋼板で、一般的には「ガルバ」と略称されて耐久性が非常に高い製品です。
防・耐火性能を要求されない農業施設・倉庫等では、外壁をガルバだけの仕様にすることが少なくありません。

複合金属サイディング施工事例。(撮影:筆者)
主に住宅などの建築物の外装仕上げ材として使用されておりますが、近年はフラットをはじめ、種々のデザインの塗装板があり、耐久性と工期短縮につながることから商業施設や福祉施設等でも多く採用されています。*6
【製造工程】
原材料調合(珪石・セメント・生石灰・アルミ粉末・水等)
↓
成型・抄造
↓
プレス
↓
オートクレーブ
↓
乾燥・加工
↓
塗装
↓
検査・保管・出荷

窯業系サイディング施工事例。(撮影:筆者)
外壁材と市場
外壁材の仕様は、構造と用途による採用実績により決められているようです。ここでは非住宅分野の70%を超えるRC構造以外での建築物における乾式外壁材の採用状況をみてみましょう。グラフ❶は、平成24(2012)年度におけるRC造以外の非住宅建築物着工面積を、用途別に表しています。
半数を占めている運輸・製造・卸売業では、建築規模・コスト・工期などの要因により主に鉄骨造で乾式外壁材を採用しており、ALC、ECP、金属パネル、塗装鋼板などを採用することが多くなっています。この場合、イニシャルコストが最優先で、耐久性や維持管理を考慮した仕上げ材が採用されることは多くはありません。また、箱形の建築物が多く、意匠的にもデザイン性を表現することが難しいことも要因として挙げられます。
しかし、近年、メンテナンスコストを重視する事業者が増えてきています。今まで採用してきた仕上げ材が数年で変色・劣化・汚れが目立つためにブランドイメージを悪くすることが懸念されており、外壁仕上げの耐久性が注視されています。
また、医療・福祉・教育・公務用での非RC化も進んでいます。「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」が施行されて6年が過ぎ、官庁関連施設の木造化も着実に進んでいることに加えて、木材関連法令の整備も進み、国の政策として木造化へ誘導が進んでいます。非住宅での木造建築物において多種多様な意匠設計の新たな提案が必要となってきています。
グラフ❷は、各団体が外壁材として出荷された数量を公表している統計をまとめたものです。集計年度、出荷数量単位などが異なるため、各団体が公表している統計資料をもとに、独自に非住宅における外壁材別シェアをまとめました。引用資料は下記になります。
PC版 480,000m2(154件 3,116m2/棟)
平成26(2014)年プレコンシステム協会資料より
CW 800,000m2(2,011件 51,000m2/棟)
平成23(2011)年カーテンウォール・防火開口部協会資料より
ALC 1,500,000m3
平成23年総出荷量(外壁のみの算出不明)
GRC 4,551t
平成26年日本GRC工業会資料より
ECP 2,600,000m2
平成26(2014)年押出成形セメント板協会資料より
SKC 未公表
KSD 未公表
YSD 約1,000,000,000m2(住宅の7割以上のシェア)
平成26(2014)年日本窯業外装材協会資料より
RC造を除く非住宅における建築の市場規模を反映した分布では、統計資料が抽出できない「その他」の部分が半数以上を占めています。建築着工面積からもうかがえるように、工場・倉庫・農林水産系の着工面積が占める部分に類似しており、調査によると金属系仕上げ材がそのほとんどを占めていることが推定されます。また、用途・耐火性能・設備等を鑑みて経済的な建築物が多いことから、意外にも住宅用と考えられている窯業系サイディングが多く採用されていることが分かります。

グラフ❶ 非住宅建築物用途別着工面積 平成24(2012)年度
国土交通省統計資料より作成
国土交通省統計資料より作成

グラフ❷ 非RC外壁材別シェア
本件に掲載しております資料は、下記団体ホームページから引用しています。詳細については該当ホームページを参照してください。
引用出典
*1 ALC協会 http://www.alc.gr.jp/
*2 日本GRC工業会 http://www.grc.gr.jp/
*3 押出成形セメント板協会 http://www.ecp-kyoukai.jp/
*4 せんい強化セメント板協会 http://www.skc-kyoukai.org/
*5 日本金属サイディング工業会 http://www.jmsia.jp/
*6 日本窯業外装材協会 http://www.nyg.gr.jp/

小柳 昌彦(こやなぎ・まさひこ)
ニチハ株式会社市場開発部部長代理
某大学建築学科卒業後、大手ゼネコン、設計事務所に勤務し、施工管理・設計業務・監理業務・研究開発に携わり現職
某大学建築学科卒業後、大手ゼネコン、設計事務所に勤務し、施工管理・設計業務・監理業務・研究開発に携わり現職
記事カテゴリー:構造 / 設備 / テクノロジー / プロダクツ
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