国宝建築と東日本震災の震災伝承をめぐる研修旅行
足立支部|令和7(2025)年10月26日(日)〜27日(月)@常陸太田、いわき
文・写真:小幡 常男(東京都建築士事務所協会足立支部、オバタ建設株式会社)
国指定史跡・名勝の西山御殿(西山荘)。
いわき震災伝承みらい館屋上の案内板。
震災語り部の講話を聞く。
白水阿弥陀堂。

 足立支部では、コロナ禍以前、日帰りと宿泊研修旅行を隔年で行っていたが、今回中断していた宿泊研修旅行を4年ぶりに再開した。

西山御殿と、いわき震災伝承みらい館
 1日目、TVドラマ「水戸黄門」で有名な、徳川光圀が隠居後亡くなるまで10年間を過ごした常陸太田市にある「西山御殿」を訪問。光圀公が「世間の歳月の流れは私の知るところでない。なぜならこの山の中は別世界なのだから」と詠んだように、晩年につくった池泉回遊庭園から始まり御殿への道を進むにつれ、世俗から離れた自然豊かで、穏やかな理想郷であることが伺え、黄門さまが愛でた景色を同じように愛でることができて心が癒される。華美を嫌った西山御殿は茅葺で内部粗壁の質素な建物だが、1817 (文化14)年の野火により焼失し、2年後に規模を縮小して再建され今日に至った。それでもなお、創建往時の面影が偲ばれ、当時の貴重なものづくり文献では、知的好奇心を刺激された。
 昼食後は、「いわき震災伝承みらい館」(令和2/2020年開館)を訪問。東日本大震災(平成22/2011年3月11日)の経験をあらためて捉えなおし、震災の地震、津波に加え、原発事故が重なる複合災害に見舞われたいわき市の記憶と教訓を風化させずに確実に後世へと伝えていくことを目的とした施設である。建物は被災した豊間中学校の跡地に建てられた。屋上からは大きな海原が望め、津波被害の解説を見ることで、津波の恐ろしさを実感した。展示室では震災の状況や復旧、復興への取り組み等の資料が展示されている。
 今回受講した「震災語り部」の方は、震災時は中学校教諭で、勤務地の中学校は海に近いため避難所指定校ではなかったが、学校ということで住民が多く避難してきた。帰すこともできなかった発災当初の生々しい体験談と、教訓について、約60分の貴重な講話を伺った。伝承の重要性と、発災時は自助・共助が特に求められること、平時からの訓練や備えの大切さを改めて教えられた。
白水阿弥陀堂に残る震災の傷跡
 2日目、国宝「白水阿弥陀堂」を訪問。「はくすい」なのか「しらみず」なのかと車中賑やかだったが、正解は「しらみずあみだどう」。平安時代末期の1160 年建立の代表的な阿弥陀堂建築で、柿葺き屋根の美しい曲線が素晴らしかった。浄土式庭園と共に阿弥陀堂の佇まいは、秋晴れと紅葉も相まって古から受け継がれている様式美に目を奪われた。しかし、ここも震災の傷跡があった。堂内撮影禁止で写真はないが、本堂の壁を気をつけて見ると、御本尊周辺の丸柱が目視でわかるほどに柱頭が外側に傾いていた。また令和5(2023)年の大雨による水害で床上30cm位の浸水もあり、復旧に携わられた方々への敬意を払いつつ、震災に耐えた復興のシンボルとして一日も早く全面復旧することを祈った。
 震災から14年が過ぎた今日、車中から復興は進んでいるが、まだまだのように思われ、建築に関わるものとして、設計・施工した建物が凶器にならないよう、不断の努力を惜しんではいけないことを学んだ。
小幡 常男(おばた・つねお)
東京都建築士事務所協会足立支部、オバタ建設株式会社
1951年 新潟県生まれ/1970年 都内工務店勤務/1975年 中央工学校卒業/1979年 オバタ建設株式会社設立
カテゴリー:支部 / ブロック情報
タグ:足立支部