外国人雇い入れの際の注意
社労士豆知識 第13回
金光 仙子(行政書士 社会保険労務士 金光総合事務所 所長)
外国人を雇いたい
 この夏、有効求人倍率が23年ぶりの高水準となり、企業の従業員確保が容易ではないとのニュースが駆け巡りました。そのような環境の中、外国人雇用に関心を持つ企業が増えています。外国人雇用は単に労働力不足を補うだけでなく、海外市場の開拓、海外進出への足掛かりとなるなど、限りない可能性を秘めています。
 夢と希望あふれる外国人雇用ですが、外国人を雇い入れる際は、まず、その人が就労可能な在留資格をもっているかどうか確認することが重要です。外国人の在留資格と在留期限、就労の可否は、外国人が所持している「在留カード」で確認できます。外国人の不法就労については、雇用主も3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科するという厳しい罰則があります。「知らなかった」では済まされません。
外国人の在留資格
 在留資格は、その人の身分によって許可されるもの(「日本人の配偶者等」、「永住者」など)と、その人の活動内容によって許可されるもの(「留学」、「技術・人文知識・国際業務」など)とに大別されます。また、特別永住者(主に朝鮮、韓国籍など)という分類の人もいます。特別永住者は在留カードではなく「特別永住者証明書」を所持しています。身分によって在留資格が許可される人や、特別永住者は、就労の制限はありませんので、今すぐ働いても問題ありません。
 注意が必要なのは、活動内容によって在留資格が許可される人たちです。大学生の在留資格は「留学」で、原則就労できません。しかし「資格外活動許可」を受ければ1週間に28時間(夏休みなどは1日8時間)まで就労可能です。近年、資格外活動の許可を受けて飲食店やコンビニで働く外国人の存在は私たちの日常風景の一部となりましたが、許可された時間を超えて働かせてしまうと、不法就労となるため注意が必要です。
 日本企業で正社員として働くような場合には就労を目的とした在留資格が必要です。たとえば新卒で就職が決まった場合は、入国管理局へ「留学」から「技術・人文知識・国際業務」等への在留資格変更許可を申請します。変更審査は1カ月程度かかることもあり、許可が出るまでは就労することはできませんのでご注意ください。
すでに就労できる在留資格を持っている人
 すでに「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持って転職してきた人はそのまま採用して大丈夫でしょうか?
 その人の在留資格は、入国管理局が前の会社の内容と労働条件から許可したものです。新しい会社の内容と労働条件は審査を受けていません。採用を決めたら早い時期に入国管理局に「就労資格証明書」交付申請をして審査を受けておくことをお勧めします。
 在留資格の範囲内と思い込んで長期間就労した後、在留期限更新の時期になって初めて転職の審査を受けた結果「実はダメでした」となった場合にはフォローのしようがありません。
外国人雇用状況届出書
 外国人(特別永住者および在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇い入れと離職の際は、ハローワークに届出が必要です。雇用保険の資格取得届と資格喪失届に記入欄がありますので正社員であれば漏れることはまずありませんが、雇用保険の対象にならない短時間のアルバイトでも別の用紙で届出が必要です。30万円以下の罰金の罰則もありますので、忘れないように気を付けましょう。
労働契約書など
 外国人雇用は誤解が生じやすい一面もあり、無用のトラブル防止のためにも、書面による労働契約は必須です。
 外国人は言語も文化も風習も異なります。多様性を受け入れる柔軟な風土の形成も、国際化に向けたこれからの企業の課題といえます。
金光 仙子(かねみつ・のりこ)
行政書士、社会保険労務士、金光総合事務所所長
金融機関勤務を経た後、十数年にわたり複数のベンチャー企業の総務経理部門に携わり、平成18年独立開業。実務に強い社会保険労務士として労働・社会保険、給与計算アウトソーシング受託を中心に事業展開し、企業の労務管理を総合的にサポートする一方で、外国人の就労等ビザ申請取次行政書士としても活躍、企業の国際化に貢献している。
記事カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士