人材力支援事業好事例発表会に参加して
──他業界の人材の募集・定着を進める好事例に触れる
寺田 宏(東京都建築士事務所協会副会長、団体別採用力スパイラルアップ事業WG主査)
内藤潔さんによる事例発表。
 令和元(2019)年9月9日(月)に(公財)東京都しごと財団主催の「人材力支援事業好事例発表会」が開催された。これは平成29(2017)年度より実施した人材支援事業で、財団が好事例と評価した5企業を選抜し発表会を実施したものである。本協会からは(株)ナイトウ総合計画事務所代表の内藤潔さんが発表した。
他業界にも共通の課題──「人材確保とその定着」
 本発表会に出席し、多くの業界が人材確保・定着の課題を共通に持っていることが認識できた。
発表のポイントは次の2点に概ね集約される。
 第1が求人方法である。専門家の指導を受け、その結果を確実に実践することで、優秀な人材確保ができたということ。
 第2に、経営者の方針の明確化や会社の規則を明文化することで、求職者や、さらには職員が共通認識できるものにすること、いわゆる見える化することである。それが評価や処遇につながり納得できる展開が生まれていくことが、人材の確保と定着には必要ということであった。
「見える化」することの意義
 たとえば、民間保育園協会の発表では、八王子の保育園経営者から財団の支援を受けて行動指針の作成に取り組んだ事例が発表された。各職員に経営者の方針を明文化して示す一方で、その行動指針に基づき、職員の職能チェックリスト等さまざまな場面で展開したという事例であった。本人の目標設定や職場での評価基準などや、職員面談に活用できるコミュニケーションツールも完成させ、職員のモチベーションアップと定着率向上が実現できたという。
 内藤さんは、報酬、働きかたやそのルールづくり、所員の意思決定の方法など、規模のそれほど大きくない設計事務所ならではのコミュニケーション方法を実施することで、「会社というプラットフォーム」の確立を明快にプレゼンテーションされた。そのほかに裁量労働制の導入や就業規則の策定など企業経営の基盤を整備し、それがさらなる人材力のアップにつながったことなどの報告があった。
 発表会を通じて、企業の規模に関わらず、企業経営のトップ方針やそれを受けた規則、制度の見える化が重要であり、そのためには専門コンサルタントの助言が重要であることがわかった(内藤さんの事例について詳しくは『平成29・30年度団体課題別人材力支援事業支援先企業取組事例集』を参照ください)。
人材力復帰支援事業からスパイラルアップ事業へ
 そこで、本協会では令和元年度より人材確保・定着のために、企業側へのコンサルティングとセミナーをプログラムとした団体別採用力スパイラルアップ事業を開始した。現在、9月にお願いしたアンケートをもとに、各個別企業の環境整備を進めている(詳細は『コア東京』8月号および事業概要ページ https://www.adecco.co.jp/news/support_program_kenchikushi/ をご覧ください)。
 より活気ある「人財」に恵まれた建築設計界の輝く未来のために2年間の事業を実施していきます。会員の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
寺田 宏(てらだ・ひろし)
東京都建築士事務所協会副会長、団体課題別人材力支援事業運営委員会委員長、清水建設株式会社一級建築士事務所
1956年 大阪府生まれ/京都大学大学院修士課程(建築学専攻)修了/1980年清水建設株式会社入社、清水建設株式会社一級建築士事務所/現在、同建築営業本部副本部長/中央支部