思い出のスケッチ #323
神代植物公園の水車小屋
稲垣 法子
 都立神代植物公園は天台宗深大寺の北側に位置し、四季を通して花や緑を楽しめる公園である。規模は都内最大の広さで四八万平方メートル、園内に植えられた植物は四、八〇〇種類で一〇万株に及ぶという。京王線調布駅やつつじヶ丘駅からバスが運行している。
 ウォーキングとして手頃な道のりでもあり、この日はバスに乗らず歩くことにした。植物公園の付近には大きな農家が数多くあり、農家の庭先には各々小さな屋台があって、朝取りの新鮮な野菜や花等が色彩り豊かに並んでいる。余りに新鮮で水々しいのと安価に魅せられて里芋、南瓜等葉物も買って、公園に着くころにはリュックが重くなってしまい、これは大失敗。
 園内にはブロック毎に手入れの行き届いた季節の花々が観賞できる。夏はやはり大きな桜並木の木陰を選んで散策するのがよい。芝生広場では幼児たちが素足で走り回って遊んでいた。
 この広場の横に水車小屋があって、この脇道を下って行くと、雑木林の小川がつながっている。涼を求めるには格好の場所でもある。
 小川の先には広い池があり、東屋で一息入れる。
 大温室では世界の珍しい植物等を観賞できる。展示コーナーもある。
 植物園からの帰りはなんといっても深大寺口を出るのがよい。深大寺の参道につながっていて、茶屋や名物の深大寺蕎麦の店など、みやげ物も軒をつらねている。ここで帰りのバスを待ちつつ、コーヒー等で一服する。
 一服して元気が出たのだが、さすがに帰りはバスが便利だった。
稲垣 法子(いながき・のりこ)
1944年 富山県富山市生まれ/1967年 女子美術大学芸術学部デザイン科インテリア専攻卒業/1977年 高木滋生建築設計事務所勤務/1992年 稲垣アトリエ二級建築士事務所設立/2005年 稲垣アトリエ一級建築士事務所設立(夫と共に)/2015年 同事務所、廃業