私の休日⑭
ドイツ樅の木伐採、製材所見学旅行
田口 吉則(東京都建築士事務所協会江戸川支部副支部長、株式会社チーム建築設計)
左:バス内での谷田貝先生の講義。
Echtle社製材所内のモミ。
Echtle社製材所。(内部の写真は撮らせていただいたが公開は残念ながらNG)
伐採する作業員の休憩所。築300年だそうだ。
モミの伐採。
伐採後、記念撮影。(撮影は地元の新聞社の方)
大雪のシュバルツヴァルト
 ドイツでは、林業が発展し盛んである。そして木の成長が休止する10月から2月までが伐採の時期である。『コア東京』連載の執筆者である谷田貝光克先生も同行されるとお聞きして、ドイツでのモミの伐採と製材所見学の旅に参加した。
 羽田を夜中に発ってフランクフルト空港に夜明け前に着く。寒い! ベンツの大型バスに乗って最初の訪問地であるシュヴァルツヴァルト(ドイツ南西部に位置する森)にモミの伐採の見学に向かった。目的地までの約3時間のバスでは、谷田貝先生の木についての講義もあり、飽きることなく目的地に近づくのだが……。山を登っていくにつれてだんだん大雪になり、途中でチェーンをつけるもバスの運転手はこれ以上無理の判断。残念ながらUターンして次の訪問地であるノルドラッハに向かう。
林業関係は人気職業──ノルドラッハの製材所
 ノルドラッハでは、Echtle社というモミのみ扱っている製材所を見学した。
 とにかく規模が大きい! それなのにきちんと経過ごとに整理されて、オートメーション化されている。また工場内は温水暖房で暖かく、働く人も薄着。ドイツでは林業関係は人気職業で、この工場でも若い人が多かった。そしてここでは、余った廃材を併設されているバイオマス発電所で電力や温水に変える。発電所は思ったよりずっと小さかったが、約1,800軒分の電力を供給し、発電で利用された水は80度の温水となり、約10kmにわたって地中にパイプを整備してこの周辺地域の暖房を賄っているそうだ。
木材自給率実質100%のドイツ
 見学の後、製材所の会議室で社長さんから説明を聞く。木材は伐採された時点でどこに使われるか既に行先が決まっていて、供給先はドイツ国内60%、輸出40%だそうだ。また谷田貝先生は、「日本の林業は明治の初期にドイツをお手本にしている。日本の現状では間伐材などの伐採した木を引き出すのに支障がある。それをまた山元に運び出すには森林整備で林道を増やさなければならない」という話をされた。
 ちなみに国土面積は日本とドイツではほぼ同じ。森林率(内陸水域を除いた国土面積に対する森林面積の割合)はドイツの30%に比べ、日本は68%もあり、ドイツから見れば羨ましいほど森林が多い国だ。しかしドイツの木材自給率は実質100%で、輸出量が輸入量を上回っているが、日本では6年連続上昇するも自給率は35%(平成28年度)ほどだ。
モミの伐採見学──クルムバッハ
2日目は前の日、大雪のため見ることができなかったモミの伐採を他の場所(クルムバッハ)で見ることとなった。
途中から道が狭くなり、大型バスは通れないので迎えの普通車に乗って5分ほどで到着。案内された作業員が休憩する山小屋では、地元の女性記者がたまたま取材に来ていて「日本ではお墓にモミを使用するという話を聞いたがどんなものなのか?」と問われ、卒塔婆を説明するのにスマートフォンで画像を引き出し、皆で説明してやっと理解してもらった。日本ではモミは他に内装材(床材)、かまぼこ板、絵巻板に使用される。
 雪が積もった森の中に入り伐採の様子を見学。あらかじめマークされたモミの木を作業員ふたりが倒れる方向を定めながらチェーンソーと斧で刻んでいく。そして見事狙い定めた方向に倒れ、一同拍手!
クリスマスマーケットで購入したお土産。手作り品が多い。
ニュルンベルクのクリスマスマーケット。
カラフルではあるがトーンが統一されて美しいまちなみのノイマルクト。
雪のノイシュヴァンシュタイン城。
 その後中世の面影を残すニュルンベルクに移動して宿泊。その日は、毎年200万人の人が訪れる世界的に有名なクリスマスマーケットの初日で、多くの観光客や地元の人たちで賑わっていた。
 3、4日目はガイザーブルク城を見学。カラフルな色彩の家々が並ぶ美しいノイマルクトを訪れる。この町に限らず通りすがるどの地方のまちなみも美しい。ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったノイシュヴァンシュタイン城と「BMW博物館」を見学してミュンヘン空港より帰路に着いた。
 今回、通常の旅行では訪れない場所や風景を見ることができ、興味深い旅であった。旅行の間このツアーに全国から参加した方々とお話しでき、充実した時間を過ごさせていただいた。
 この旅行を企画してくださった鹿児島のマルサ工業の方々にお礼を申し上げます。
田口 吉則(たぐち・よしのり)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会委員長・江戸川支部副支部長、株式会社チーム建築設計
1953年東京生まれ/(株)チーム建築設計代表取締役/2017年 東京都建築士事務所協会会誌・HP専門専門委員委員長
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