社労士豆知識 ㉖
年金の受給資格期間が10年に短縮!?
鍋島知未(なべしま社会保険労務士事務所)
年金受給資格期間の短縮の背景
 これまでは、老齢年金を受け取るためには、保険料納付済期間(国民年金の納付済期間・厚生年金保険、共済組合等の加入期間を含む)と国民年金の保険料免除期間等を合算した受給資格期間が原則25年以上必要でした。
 日本の年金制度は、諸外国に比べて受給資格期間が長いことから、無年金者対策として、平成27(2015)年10月に予定していた消費税10%への引き上げに合わせて現行の25年から10年へ短縮する予定でした。しかし、消費税引き上げの実施が大幅に延期されたため、期間短縮にかかる法律の施行日を「消費税10%引き上げ時」から「平成29(2017)年8月1日」に改めました。これにより平成29(2017)年8月1日からは、受給資格期間が10年以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになります。
合算対象期間(カラ期間)とは?
 カラ期間とは、年金の受給資格期間を満たさない場合に加算できる期間です。受給資格をみるためには必要な期間ですが、年金額には反映されません。代表的なものは、下図のようなサラリーマンの妻のケースがあります。国民年金に任意加入できるが任意加入しなかった期間がカラ期間となります。
 カラ期間は、多種多様です。今まで受給資格期間が足りずに諦めていた方は、このカラ期間を使って10年以上になるか再度確認してみましょう。
※昭和36年4月〜昭和61年3月までで、妻の年齢が20歳〜60歳未満の場合
対象者と対象となる年金
 対象者は、年金支給開始年齢に達している方で、原則として年金を受け取るために必要な期間が10年以上ある方です。この10年短縮により初めて年金受給権を得ることができるのは約64万人になる見通しです。
 対象となる年金は、老齢基礎年金・老齢厚生年金・退職共済年金、これに準ずる旧法の老齢年金、寡婦年金・旧法の寡婦年金などです。
今後のスケジュール
 対象者約64万人に対して、平成29(2017)年2月下旬から7月上旬までに、5回に分けて期間短縮用の年金請求書を送付する予定でした。しかし、初回の送付が遅れており、対象者の手元に届くまでにはもう少し時間がかかりそうです。この年金請求書に関しては、法律の施行日である平成29(2017)年8月以前でも受付が可能となっています。
国民年金額の目安
※平成29年度価格より算出
 厚生年金については、生年月日や給与等により異なりますので、正確な見込み額は、最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターで試算されることをお薦めします。
注意点
① 今回の10年短縮は、高齢者の無年金救済が主な目的です。今後10年の受給資格期間だけを満たし、その後国民年金の保険料を納付しない場合は、上記の表のように低額な年金になってしまいます。そのため、決められた期間はしっかりと保険料を納付し、納付できない場合は「免除」手続きを行うことが大切です。
② 対象となる年金は、老齢年金ですので、10年の受給資格期間を満たし、新たに年金を受給していた方が亡くなっても遺族年金は支給されません。10年の受給資格期間を満たした人が平成29(2017)年8月1日以降に老齢年金を請求せずに亡くなった場合は、未支給年金がもらえる場合があります。
③ 今回の法改正で初めて受給権を取得できる人については、法律の施行後の平成29(2017)年9月分から受給できます。実際に振り込まれるのは、10月以降となります。
鍋島 知未(なべしま・ともみ)
なべしま社会保険労務士事務所所長、東京都社会保険労務士会台東支部副会計、総務委員会副委員長、社会教育副部会長
記事カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士