東京消防庁からのお知らせ⑫
みなし従属について
東京消防庁予防部予防課
1 はじめに

 消防法令の適用にあたっては、まず消防法上の用途を決定し、それに応じて、消防用設備等の設置や防火管理などの規定に該当するかを判断します。
 本稿では、消防法上の用途の原則と「みなし従属」について紹介します。
2 消防法上の用途

 消防用設備等の設置が義務付けられるような防火対象物の用途は、消防法施行令別表第1に定められています。防火対象物の中に用途が1つのみの場合は、この表の(1)項から(15)項までのどれにあたるかを、(1)項から順に追っていけば決定することができます(表)。

表 主な消防法施行令別表第1の用途例
 異なる用途が2つ、3つそれ以上ある防火対象物の用途の決定は、消防法施行令第1条の2第2項に定められており、次によります。
(1)原則
 異なる2以上の用途のうちに消防法施行令別表第1(1)項から(15)項までに掲げる防火対象物の用途のいずれかに該当する用途が含まれている場合には、(16)項イ又は(16)項ロとなります。
なお、消防法施行令別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途が含まれる場合は、(16)項イとなります。
(2)例外
 消防法施行令第1条の2第2項にはただし書きがあり、「異なる2以上の用途のうちに、1の用途で、当該1の用途に供される防火対象物の部分がその管理についての権原、利用形態その他の状況により他の用途に供される部分の従属的な部分を構成すると認められるものがあるときは、当該1の用途は、当該他の用途に含まれるものとする」とされています。

3 従属的な部分を構成すると認められるもの

 「従属的な部分を構成すると認められるもの」については、昭和50年に発出された国の消防庁予防課長通知の中で、いわゆる「機能従属」及び「みなし従属」の2つの取扱いが示されています。
(1)機能従属
 次の3つの要件をすべて満たす場合は、主用途に機能的に従属する部分として、消防法上の用途は主用途と同じになります(図1)。主用途部分とは、防火対象物各用途の目的を果たすために必要不可欠な部分であり、一般的に従属的な部分の面積より大きい部分をいいます。
① 従属的な部分についての管理権原を有する者が、主用途部分の管理権原を有する者と同一であること。
② 従属的な部分の利用者が、主用途部分の利用者と同一であるか又は密接な関係を有すること。
③ 従属的な部分の利用時間が、主用途部分の利用時間とほぼ同一であること。
図1 機能従属の例
(2)みなし従属
 次の2つの要件をいずれも満たす場合は、主用途とは独立した用途の部分であっても主用途とみなして、消防法上の用途は主用途と同じになります(図2)。
① 主用途部分の床面積の合計が、防火対象物の延べ面積の90%以上である。
② 主用途以外の独立した用途に供される部分の床面積の合計が300㎡未満である。
 この取扱いの際、主用途と主用途以外の独立した用途とで共用される廊下、階段、通路、便所、管理室、倉庫、機械室等の部分の床面積は、主用途部分及び他の独立した用途に供される部分のそれぞれの床面積に応じて按分します。
図2 みなし従属の例
4 みなし従属の取扱いの一部改正

 平成27年4月1日に施行された消防法施行令の一部を改正する政令で、入院施設のある診療所やグループホームや旅館など利用者の入居又は宿泊を伴う用途には、延べ面積にかかわらず自動火災報知設備の設置が義務付けられました。
 しかし、建物全体を入居又は宿泊を伴う用途で使用しているものと、例えば共同住宅の1室など建物の一部を入居又は宿泊を伴う用途で使用していて「みなし従属」の取扱いにより共同住宅とみなされたものとでは、同じ規模・同じ使用形態であっても自動火災報知設備の設置が義務付けられたり義務付けられなかったり、差が生じてしまいます(図3)。
図3 みなし従属適用する時の自動火災報知設備設置
 そこで、適切に法令が適用されるよう、延べ面積にかかわらず自動火災報知設備の設置が義務付けられた消防法施行令別表第1(5)項イ、(6)項イ(1)から(3)まで及び(6)項ハのうち利用者の入居又は宿泊を伴うものは、「みなし従属」の取扱いをしないこととされました(図4)。
 なお、消防法施行令別表第1(2)項ニ及び(6)項ロは、従前から「みなし従属」の取扱いをしないこととされています。
図4 みなし従属適用しない時の自動火災報知設備設置
5 おわりに

 消防法上の用途は、設置が義務付けられる消防用設備等、防火管理などに大きく影響します。
 特に既存の防火対象物の一部の用途を変更する計画の場合には管轄する消防署にご相談ください。
記事カテゴリー:建築法規 / 行政