思い出のスケッチ #302
川越・蔵造りのまちなみ
中坪 明夫(東京都建築士事務所協会北部支部、菊池建設株式会社一級建築士事務所)
 休日に川越を散策しながら蔵造りでも描きに行こうと決めて、川越駅から歩き始めました。毎日通勤で通っているクレアモール商店街から、本川越駅前を通り過ぎ、土産店の「小江戸蔵里」まで歩いてまず一服。さらに大正浪漫夢通りから仲町の交差点を過ぎると、急に空が広がって(電柱がない)、蔵造りの建物が見えてきます。シンボルの「時の鐘」や「大沢家住宅」を含め、仲町の交差点から札の辻の信号までの間の約六〇〇メートルくらいが、蔵造りのまちなみになっています。
 川越の休日は寺院などをお参りされる方、食べ歩きを楽しんでいる方、またここ数年着物で散策を楽しんでいる方を多く見かけます。菓子屋横丁で団子を買い込んで、描く目的の瀬戸物店へ。 この建物は重厚な蔵造りで屋根瓦、破風、建具に特徴があります。
 さて描き始めたものの屋根を含め縦横のバランスが難しく手が進みません。数時間を立ちっぱなしで描くも、結局延べ三日を通うことになりました。良く観察をすると、屋根を受ける肘木のような構造体、棟瓦の意匠、分厚い建具、尺五寸はあろうかと思える一階の柱など、いくつも発見がありました。さて当時この建物を建てるときに時間と費用はどのくらいかかったのか? は頭からはずすことにして、愛用の鉛筆HiユニBを走らせた数日間でした。
中坪明夫(なかつぼ・あきお)
菊池建設株式会社東村山支店支店長、東京都建築士事務所協会北部支部
2000年 菊池建設株式会社一級建築士事務所入社