産前・産後休業、育児休業の取り扱いについて
連載:社労士豆知識 第8回
竹山 文(竹山社会保険労務士事務所 所長)
 社会保険における子育て支援制度はさまざまありますが、すべて届出をしないとその恩恵を受けることができません。産前・産後休業から育児休業にかけて、社会保険の手続きは非常に煩雑です。人事・労務担当者は、手続き漏れのないよう気をつけましょう。

出産ー育児の手続きチェック表
産前・産後休業
 出産予定日42日(多胎妊娠の場合は98日)前から産前休業に入り、出産日の翌日から数えて56日までが産後休業です。出産日は産前期間に入れて数えます。予定日通りに生まれると、産前・産後休業期間は、98日間ということになります。
 予定日がずれた場合、例えば、予定日から2日遅れて出産した場合は、産前44日+産後56日、合計100日がトータルの休業期間となります。予定日より早く産まれた場合でも産後56日で産休は終了します。
 昨年の4月から産前・産後休業中の社会保険料(健保、厚年)は、本人負担分、会社負担分とも免除されることとなりました。産前休業に入った日の属する月から産後休業終了日の翌日が属する月の前月までの保険料が免除期間です。社会保険料は月単位で徴収されますので、例えば5月1日に産休開始した人でも、31日に開始した人でも、5月分の保険料から免除されることとなります。
 また、役員の方でも被保険者であれば申出が可能です。
 産前・産後休業中は健康保険からの給付があります。
 出産育児一時金は、赤ちゃん1人につき42万円が支給されます。双子の場合は84万円です。直接支払制度を利用すると、病院の窓口では42万円を超えた分だけの分娩費用を支払えば済むようになっています。
 産前・産後休業期間中に給与が支払われないときは、1日につき標準報酬日額の2/3に相当する額の出産手当金を受けることができます。
育児休業
 一定の要件に該当する従業員は、原則として子が1歳に達する日(誕生日の前日)まで育児休業をとることができます。女性従業員は産前・産後休業終了後から育児休業に入りますが、男性従業員は子の出生日からとることができます。
 育児休業期間中も社会保険料(健保、厚年)が免除されます。産前・産後休業中の社会保険料と同じ考え方で、男性が1〜2週間程度の育児休業をとるときは、その期間が暦月をまたぐと1ヶ月社会保険料が免除されることになります。また、会社が3歳までの育児休業を認めている場合は、3歳まで免除が続きます。
 育児休業中は、雇用保険からの育児休業給付金を受けることができます(支給要件あり)。こちらはハローワークに申請手続きをします。支給額は、最初の6ヶ月間は1日につき休業開始時賃金日額の67%、その後は50%相当額です。
職場復帰後
 3歳までの子を養育する従業員(男女とも)は、子育てのために報酬が減っても、将来の年金は出産前の高い報酬で計算してくれるという厚生年金の特例(養育期間特例)があります。その間の保険料は低い報酬で計算されたものを負担します。
竹山 文(たけやま・あや)
特定社会保険労務士・年金アドバイザー/北海道釧路市出身/出版社勤務を経て、2006年12月、竹山社会保険労務士事務所を設立し独立開業/2010年4月、株式会社ベストアビリティを設立し取締役就任
タグ:社労士, 産前・産後休業, 育児休業