1カ月単位の変形労働時間制について
社労士豆知識 第15回
大石 誠(大石経営労務事務所 所長)
1カ月単位の変形労働時間制とは
 1カ月以内の一定の期間を平均して各週の所定労働時間を決めるものです。変形期間を平均して、1週間の労働時間が週40時間以下になっていれば、忙しい時期の所定労働時間が1日8時間、週40時間を超えていても、時間外労働としての扱いから除外されるという制度です(特例措置対象事業場においては週44時間以下)。
 月の初めは比較的余裕があるが、月末の1週間が繁忙にあたる場合や、タクシー会社や介護事業所等の隔日勤務を設けている場合などに導入することが適している制度といえます。※法定労働時間は、原則1週40時間、1日8時間です(特例措置対象事業場 においては週44時間)。
必要要件
(1)労使協定等に定める
 労使協定または就業規則その他これに準ずるものにより、①対象労働者の範囲、②対象期間および起算日、③労働日および労働日ごとの労働時間、④労使協定の有効期間等、この制度に関する規定を設ける必要があります。
 また、締結した労使協定や作成・変更した就業規則は、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
(2)変形期間とその起算日
 1カ月以内とされています。よって、1カ月単位以内の4週間単位などの変形期間も可能です。また、変形期間の長さと共に、その起算日も明らかになるよう定めることが必要です。
(3)変形期間における法定労働時間の上限について
 以下の式によって計算されます。
40(時間)×変形期間の暦日数/7
※特例措置対象事業場においては44(時間)×変形期間の暦日数/7
(4)労働日、労働時間の特定
 変形期間における各日、各週の労働時間を変形期間の開始日の前日までに、あらかじめ具体的に定めておかなければなりません。
 各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時間とする」という定め方ではなく、かつ、これを労働者に周知することが必要となります。
(5)割増賃金
 変形期間に突入してからのシフト表の変更に関しては、法定労働時間を超えた場合の時間について割増賃金を支払うことが必要となります。

1. 1日について
・8時間を超える時間を定めた日は、その時間を超えて労働させた時間。
・上記以外の日は、8時間を超えて労働させた時間。
2. 1週間について
・40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超える時間を定めた週は、その時間を超えて労働させた時間。
・上記以外の週は、40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて労働させた時間(1日について時間外労働になる時間を除く)。
3. 変形期間について
・変形期間における法定労働時間の総枠(法定労働時間×対象期間の暦日数/7)を超えて労働させた時間(1日および1週間について時間外労働になる時間を除く)。

詳細につきましては、管轄の労働基準監督署にお尋ねください。
大石 誠(おおいし・まこと)
大石経営労務事務所 所長
特定社会保険労務士 産業カウンセラー
記事カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士