マネジメント支援センター連載企画 第5回
建築分野におけるBIM推進と飛躍へ
岩﨑 孝一(東京都建築士事務所協会理事、江東支部、株式会社吾妻設計)
BIMモデル図・各種デ-タ-は常に整合性確保(大塚商会提供)。
BIMモデル図・可視化(VR)・各種解析ソフト・法規検討の付加価値(大塚商会提供)。
 世界中で設計プロジェクトにBIM(Building Information Modeling)の導入が進められています。欧米、東南アジア諸国でも、企画、プロポーザル、実施設計業務にBIMが駆使されており、3Dモデルは発注側、設計側の協議において高度な成果を上げています。日本においても、令和2(2020)年3月には、国土交通省から建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(建築BIM推進会議決定)が公開されています。しかし、国内の現状は、2D、3D-CADが混在しており、大手設計事務所以外では、いまだに2D-CADが主流と見られます。
 BIMはオブジェクト指向の電子データを使って建築やインフラを設計・施工・運営するプロセス(英国規格協会BIMガイドライン)です。設計業界が改革、飛躍するチャンスです。
 ただ、小規模事務所のBIM導入は、一部導入に興味を持った設計者を除き、夜明け前の状態といえるでしょう。東京都建築士事務所協会の構成会員は小規模事務所が多く、BIM推進が緊急課題であることから、協会として導入推進に向けての情報提供を始めています。
 協会では、今年度『コア東京』での志手一哉芝浦工大教授によるBIM理論の連載(「ICT時代に建築士はどう生きるか」2020年6月号より)、賛助会による講演会などのほか、事業委員会で、昨年(令和2/2020年)10月に、代表的BIMソフト製品(Revit、Archicad等)の1時間以上となる紹介ビデオを制作し会員向けに公開しました。さらに、12月10日に「BIM概要セミナー」として賛助会員大塚商会のBIM専門技術講師による講習会を実施しました。
会員向けにビデオを公開
 BIM製品紹介ビデオと、BIM概要セミナーの内容を区分ごとに分割したビデオは、協会ホームページで公開中です。閲覧には、会員ログインが必要です。
http://taaf.or.jp/member/download/index.html
BIM概要セミナーの実施内容
  • 基礎的なライセンス形態、BIMソフトの選び方。
  • 設計段階でのBIMのメリット。BIMを使用した設計の特徴、可視化。
  • BIMを使用した設計の特徴として、平面図、立面図、断面図、建具、設備の変更が常に全図に反映され整合性を確保。
  • 国土交通省BIM活用関連情報の紹介。
  • 市場状況とデータ変換、IFCに関して。
  • チームワーク設計での留意点、BIMを使用した作業分担。
 また、セミナー内で、ソフトとハードを組み合わせた期間限定特価のお知らせを紹介しました。
 セミナー後の質疑応答では、当初の予想より、はるかに多くの質問が寄せられ、多くの会員が注目している状況であることがわかりました。内容は以下の通りです。
  • 導入したソフトをもっと有効に使いたい。
  • 設計で、BIM・CIM(土木設計向け)の案件で必要に迫られている会員。
  • 取引先から、BIM・CIMの相談がきている。
  • 困りごとに対応の相談。
  • 有料セミナーの講座状況説明と費用についてなど多数。
BIM推進の利点
  • 計画段階から可視化することでのコミュニケーション円滑化。
  • 図面の整合化、BIMを使用した設計では、変更など各種図面に反映、整合性確保。
  • 法規検討、確認申請にも対応が始まっている。
 BIMを導入することで、各図面の整合性が高まり、結果的に作業手間、指示時間が減少、より効率的な仕事が可能であり、働き方改革へと一歩前進することが期待されます。小規模事務所では、操作性の理解、操作取得時間の対策に追われたり、高額なソフトの導入コストの捻出、対価を考えても、なかなか結論が出ない毎日と思われます。会員への利便、技術取得サポートなどを協会は目指していきます。
 BIMに関して、事業委員会、マネジメント支援センターの枠を超えて、設計事務所、建設会社の使用事例の紹介をセミナー形式で行い、小規模事務所が導入できるよう、対策や工夫等々をお伝えすることを計画中です。
岩﨑 孝一(いわさき・こういち)
東京都建築士事務所協会理事、マネジメント支援センターWG副主査、江東支部、株式会社吾妻設計
1948年 栃木県佐野市生まれ/1972年 日本大学理工学部建築学科卒業後、(株)協立建築設計事務所入社/現在、(株)吾妻設計/江東支部