東京百景2019(第20回建築ふれあいフェア各支部ポストカード)
万世橋⾼架橋
古⽥ 秀⾏(東京都建築⼠事務所協会千代⽥⽀部、⽀部編集委員、株式会社エノア総合計画事務所)
 この界隈は東京駅が開通する約2年前、明治45(1912)年に万世橋駅舎が⾠野⾦吾の設計により完成、⼤いに賑わった。鉄道院の設計による万世橋⾼架橋上には、万世橋駅のホームがあり、駅舎と⼀体利⽤された。
 関東⼤震災(大正12/1923年)にて駅舎部分は消滅するも、線路敷のあるレンガアーチ造の⾼架橋は⽣き残った。その後「交通博物館」が駅舎跡地に建設され、約70年間運営された歴史がある。
 そして平成25(2013)年、JR東⽇本の再開発により、オフイスビル及び万世橋⾼架橋の遺構整備も含め新たな商業複合施設として⽣まれ変わった。神⽥川に⾯した親⽔デッキが設置され、⽔辺の⾵景を楽しみながら散策したり、内部に保存整備された旧駅舎の遺構やJR中央線を望む展望デッキが⾒学できる。
 歴史的遺産が継承されながら、新な要素が加えられ、アメニティある都市再開発の核となった⾼架橋は東京百景に相応しいと思えた。幾度となく⾜を運ぶうち、⼣刻頃からレンガアーチをかたどる灯が神⽥川に映り込む様に⾵情を感じた。
 撮影場所は万世橋と万世橋⾼架橋の両⽅が映る昌平橋から、⾼架橋を渡る中央線の⾞輛通過と、⾵で揺らめく神⽥川の川⾯が落ち着くタイミングを狙って撮影した。その間何気に交通博物館に幾度も通ったり、SLを追いかけ旅した半世紀前、少年時代の記憶が蘇ってきた。
古田 秀行(ふるた・ひでゆき)
株式会社エノア総合計画事務所取締役 計画設計第一部長、東京都建築士事務所協会千代田支部編集委員
1957年 東京生まれ/1979年 日本大学生産工学部建築工学科卒業/株式会社間組建築設計部を経て、2003年 株式会社エノア総合計画事務所入社、現在に至る