社労士豆知識 第47回
男性が育児休業を取得した場合の主な助成金
旭 邦篤(社会保険労務士法人東海林・旭事務所 代表社員)
 最近、関与先のお客様から「男性社員から育児休業を取りたいという申し出があって…」という相談が増えてきました。また、希望する取得日数も以前に比べると長くなっています。厚生労働省「雇用均等基本調査」によると、平成30年度の男性育休取得率は6.16%と過去最高を更新しています。もっとも女性育児休業取得率はここ10年以上、8割以上で推移しており、育児休業の取得期間も女性は9割近くが6カ月以上となっている一方、男性は5日未満36.3%、5日~2週間未満35.1%と、7割以上が2週間未満となっているのが現実で、「なんちゃって育休」とも揶揄されています。今回、男性が育児休業を取得した場合の主な助成金として、4月から制度が拡充された厚生労働省と東京都の助成金を確認してみましょう。
1.厚生労働省:「両立支援等助成金」出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
 男性労働者が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、育児休業や育児目的休暇を取得する男性労働者が生じた事業主に支給。

①育休を男性社員が5日以上(中小企業)取得する場合、1人目57万円、2人目以降14.25万円を支給(生後8週間以内)。
 令和2年度は、*個別支援加算(男性が育児休業を取得しやすい職場風土づくりの取り組みに加え、対象男性労働者に対し育児休業取得前に個別面談など育児休業の取得を後押しする取り組みを行った場合に加算)の新設など支給要件を拡充・一部緩和。
※育児休業等支援コース(育休取得時・職場復帰時)との併給は不可。その他の要件についても、厚労省資料等でご確認ください。

②「育児目的休暇」の制度を新たに導入して男性社員が5日以上育児目的休暇を取得する場合1企業1回限り28.5万円を支給(出生前6週間又は出生後8週間以内)。
2.東京都(東京しごと財団):「働くパパママ育休取得応援奨励金」(働くパパコース)
 都内企業等の男性従業員が育児休業を取得した場合、当該企業等に奨励金を支給、男性の育児参加を促進、職場環境の改善を図る。

(1) 奨励金の対象となる取り組み
 養育する子が2歳になるまでの間に、男性従業員が連続する15日以上の育児休業を取得した後、原職に復帰し3カ月が経過した場合に、奨励金を支給。
※奨励金の申請は、1奨励事業者に対し、1事業年度2回まで。
(2) 奨励事業開始および終了日
 令和2年4月1日(水) ~ 令和3年3月31日(水)
 ※予算の範囲を超えた場合、終了日より前に申請受付を終了。
(3) 奨励金の支給額
 なお、厚生労働省「両立支援等助成金」出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)と、東京しごと財団「働くパパママ育休取得応援奨励金」(働くパパコース)は要件を満たせば両方とも申請することができます。
 今回の新型コロナウイルス感染拡大が企業活動、人びとの暮らしに与えた影響は計り知れません。在宅勤務や時差出勤など、多種多様な働き方はかつてないほど現れています。社員は育児や介護、治療と仕事の両立といったさまざまなライフステージの変化を経験していきます。働きやすい会社へと変化していく中で、男性の育児休業取得の推進もそのひとつではないでしょうか。それぞれの会社で、実態に即した柔軟な育児休業制度を検討してみてはいかがでしょうか。
旭 邦篤(あさひ・くにあつ)
特定社会保険労務士、第1種衛生管理者
十数年にわたり企業で営業等に従事、2010年から社労士業務、企業の労務トラブル対応や円滑な労務管理の支援を中心に活動している
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士