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佐藤 吉弥(東京都建築士事務所協会理事、株式会社イヅミ建築設計事務所)
ツバメの巣づくり
4月も中ごろになると、私の住んでいる街の商店街をツバメが飛び始めます。ツバメたちは毎年この商店街の不動産屋の軒先や、コンビニの軒先を覗きまわり、今年の住まいの候補地を探しているようです。それも駅に近い賑やかなエリアがお好みのようで、ひとつ通りを裏に回れば、小さな畑や軒の大きい住宅があり、巣づくりの材料、餌の虫も豊富な職住近接なおすすめ物件がたくさんありそうなのにです。
 少し調べてみるとツバメたちの住まいの条件は通風、日当たりの他に、ある程度賑やかなところを選ぶようで、つまり人間たちは彼らのガードマンというわけです。
 天敵はなんといってカラス、蛇、それと一部の人間たちらしいのですが、私の地元の商店街の皆さんは比較的ウェルカムなようで、落下防止の受けを付けたり、頭上注意の張り紙を設置してくれるので、ノビノビ、スイスイと物件探しをしています。
 ちなみに、ツバメの親、ヒナ、卵を故意に傷つける行為は鳥獣保護法に触れ、100万円以下の罰金または1年以下の懲役になるのでご注意。
『コア東京』の3月号にも、小山さんがアオゲラの巣づくりのほのぼのとしたお話を書いておられましたが、ツバメもアオゲラも暖かく見守ってくれる人間が必要ということです。ともかく、ツバメたちはペット以外の動物の中で身近に接することが多い自然の生き物といえるかもしれません。
 今年のゴールデンウィークは、新型コロナウィルス感染拡大による自粛のために、海へも山へもふるさとへも出かけられず、近所の公園さえも気を遣いながらの散歩でした。見上げれば底が抜けたような青い空と、良い薫りの風も十分楽しむこともできず、気持ちよい季節の変化を味わい損ねたと思いましたが、ツバメたちはいつもと変わらず初夏を連れてきてくれたようです。
来年の今ごろは、いつもの年と同じように爽やかな5月であることを願いながら、今晩も居酒屋「stay home」で鰹の刺身に茗荷を多めに添えて、茹でた蚕豆で冷酒にしようかな。
佐藤 吉弥(さとう・きちや)
東京都建築士事務所協会理事、株式会社イヅミ建築設計事務所
1955年 山形県山形市生れ/1978年 東海大学工学部建築科卒/1978年(株)イヅミ建築設計事務所入社/現在、同代表取締役/町田支部
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