懇談会「女性からみた建築士事務所運営」
令和2(2020)年2月14日(金)15:00〜@本会会議室
飛田 早苗(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会)
ワークセッション(A班)。
ワークセッション(B班)。
発表の様子。(撮影:筆者)
ワークセッションで語られた建築士事務所運営の課題と対処方法・工夫
 東京都建築士事務所協会主催の「女性からみた建築士事務所運営」をテーマとする懇談会が開催された。女性経営者や組織事務所に勤務する女性9名に加え、スパイラルアップ事業ワーキング(WG)、働き方改革推進WGの委員11名、オブザーバーとして社労士、人事マネジメントの専門家なども加えた男女混成の全25名にて、情報交換や共通課題に対する議論を行った。当日は、バレンタインデーだったこともあり、絶品お茶菓子も用意され、なごやかな雰囲気の中、会がスタートした。
挨拶・主旨説明──寺田宏スパイラルアップ事業WG主査、横村隆子委員
 まずはじめに、寺田主査より「女性ばかり集められても、との声があることは承知しているが、」との前置きの後、一級建築士合格者の女性比率が20%強であるのに対し、当協会に所属する女性管理建築士が3%に留まっている現実を踏まえ、これから設計界に入ってくる若い人にとっての道しるべとなるような、それぞれの建築士が個性を生かして、いきいきと自然体で活躍できる働き方について意見いただきたい、との挨拶があった。
 続いて、横村委員より、スパイラルアップ事業WGで行ったアンケート結果として、業界として女性の活躍や登用が進んでいない現状報告があり、女性という視点だけでなく、フラットな男女参画の働き方の環境づくり、男性の意識改革を図ることも視野に入れて議論いただきたいとの主旨説明があった。
ワークセッション
 ワークセッションは、2班に分かれて事務所運営の課題や、ライフステージごとの働き方に関する経験や工夫を話し合った。とはいえ、個性派メンバーが一堂に会したため、冒頭の自己紹介の時点で予定時間を大幅に超過。予想をはるかに超える盛り上がりに、各班のファシリテーターを務めた泉晃子委員、鈴鹿美穂委員が「うれしい悲鳴」を上げる事態と化した。
 自己紹介が終わりその場にいる多くの人が感じたのは、ここにいる人たちは、みなそれぞれの環境において、さまざまな課題や障害を上手く乗り越えてきた、ということ。それゆえ、セッションでは、ひとりひとりの発言に、経験したからこそ伝えられる工夫や対処方法が数多くあった。すべてを紹介することはできないが、表に示す内容が議論された。
総括
 日本社会は、長らく、子育てや老人介護などの社会問題に対して、家族に頼らざるを得ない状況を許容し、女性の自立や活躍を妨げてきた。長年かけて構築された制度や古い価値観を打ち破るのは容易なことではないし、多くの人たちが、今なお、自分のライフスタイルと時代遅れな社会制度の狭間で、もがき苦しんでいる。しかし、今回の会を通じて、集まった人たちの多くがその困難を自分の力や周りの人の手助けで乗り越えることができたのは、人びとの生活をデザインする建築士だからこそ実現できた先進的な「働き方」、「暮らし方」の結果なのではないか、と感じた。
 一連のワーキンググループやこの懇談会をきっかけとして、継続的に多様な建築設計者像が議論され、これからの建築界を担う人びとにとっての活気ある未来づくりの一助となることを期待したい。
飛田 早苗(とびた・さなえ)
東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員、株式会社日建設計
神奈川県横浜市生まれ/慶應義塾大学総合政策学部卒業/現在、株式会社日建設計広報室課長