VOICE
小山 充男(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会、北部支部、建築工房 上二 一級建築士事務所)
アオゲラの雌(上)と雄(下)。(撮影:筆者)
わが家の隣は児童公園になっている。2階の窓には桜の枝が迫り、借景ではあるが家に居ながら花見などの季節の移ろいを楽しめる。また、さまざまな野鳥が訪れ、バードウォッチングができるのも楽しみである。シジュウカラ、メジロ、オナガ、ムクドリといったポピュラーな鳥や、キビタキといった住宅街では滅多にお目に掛かれない鳥までさまざまだ。そんな中で建築士の家の隣と知ってか知らぬか、巣をつくり始めた鳥がいた。
それは夏の日差しを感じ始めたある日だった。聞きなれぬ鳥の鳴き声がしたので、窓の外へ目をやると見慣れぬキツツキが桜に木に止まり、幹を突いている。コゲラやアカゲラは時々見かけるが、ひと回り大きく、赤い頭頂が特徴のキツツキである。ネットで検索するとアオゲラと判明。羽の色が淡い黄緑色なのが名前の由来らしい。日本固有種で英名はそのままJapanese Green Woodpeckerとのこと。どうも一心不乱に幹を突いている様子から、捕食のためではなく巣穴を掘っているらしい。そのうち他のアオゲラと交代する。どうもつがいらしい。産卵、子育てのための巣づくりと確信した。
巣は地面から3mぐらいの高さにある。よりによって滑り台の真上。遊んでいる子どもたちにすぐ見つかり、好奇心旺盛な子どもはいたずらを始める。その度に窓を開けて「静かに見守ってね」と優しく注意するが、子どもはお構いなしに物を投げつける。困って市役所の公園課の鳥に詳しい職員に相談すると、卵やヒナがカラスの標的になるため、あえて人目に付くところへ巣をつくっているとの説明だった。要するに自然に任せて見守るしかないとのことである。カラスが増えたのは帰するところ人間の所業ゆえである。それがアオゲラの巣づくりに影響しているとは考えさせられたエピソードだった。
ヒナが無事に巣立つか心配だったが、梅雨明けごろに巣立っていった。ヒナの巣立ちに感動しつつも、ホッとする。しかし新たな心配も生まれた。大きな巣穴が空いた老木の桜。いつまで花見ができるかなあ……。(小山 充男)
小山 充男(こやま・みつお)
東京都建築士事務所協会北部支部、建築工房 上二 一級建築士事務所
1967年長野県松本市生まれ/武蔵野美術大学建築学科卒業
カテゴリー:その他の読み物
タグ:VOICE編集後記