VOICE
房前 寿明(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員会、目黒支部副支部長、ユニップデザイン株式会社)
撮影:小川重雄
この編集後記VOICEは会誌・HP専門委員会のメンバーで書いているので順番に担当が巡ってくる。2019年2月号に記載していただいてから概ね1年ほど経ち再び筆をとる。
先回は沖縄での現場について触れたが、昨年4月にその保育所が無事開所を迎えることができた。今回はその報告を兼ねてエピソードとしたい。
現在沖縄での建設業界はバブル並みだそうだ。関東でも同様だがとにかく建設ラッシュにも関わらす、職人の不足、業界離れや高齢化が加速している。若い職人たちは単価がよい南の島の方へ流れていると聞いた。ただでさえ大型台風による停電や地中からの石灰岩の出現など、工期が詰まってきているのでラストスパートは気が気ではない。さらに離島ということで本土より取り寄せる材料がすぐに届かない。先行して発注しているものの追加や修正は動きが取れない。このような切迫した状況で、沖縄の人はのんびりしているので何度も催促した方がよいとか、ちゃんと説明したほうがよいとかたびたび言われるが、逆にかなり気を遣う。しかしそんな心配をよそに、最後は監督をはじめ職人たちは夜を徹して細部まで丁寧に仕上げてくれた。
完成した保育所の概要であるが、与条件より設計も工期も厳しいRC地下1階地上2階建となった。沖縄の強い日差しや暴風を防ぐために庇や手摺を連続させて水平ラインが通るようなデザインとしている。駐車場のある1層目からは大階段やEVを利用して2、3層目の保育室へ向かう。3~5歳児保育室は園庭のある2層目に、0~2歳児保育室は3層目にあるが、下階から繋がる芝生で覆われた屋上園庭に隣接する。地域子育て支援室(カフェ)など最上階からはうるま市街地を含めた太平洋が展望できる。今回は特別に沖縄仕様ということで園庭各所にみんなが一緒に浴びることができる巨大シャワーを設置した。園児や保育士たちが楽しそうにシャワーを浴びる姿をみると、微笑ましくてホッとする。いままでになく工期の厳しい現場であったが、改めて琉球の職人たちに心から感謝申し上げたい。
房前 寿明(ふさまえ・としあき)
東京都建築士事務所協会目黒支部副支部長、ユニップデザイン株式会社
1971年 大分県大分市生まれ/1996年 九州芸術工科大学 生活環境専攻 博士課程前期 修了/1996年 仙田満+株式会社環境デザイン研究所 勤務/2003年 プロ・ジェクト、長谷山純一級建築士事務所 勤務/2007年 ユニップデザイン株式会社 設立、現在に至る
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