第4ブロック研修旅行
第4ブロック|令和元(2019)年11月2〜3日@御殿場、伊豆
押川 照三(東京都建築士事務所協会会員研修委員会委員、板橋支部、+A一級建築士事務所)
「日本盲導犬総合センター盲導犬の里 富士ハーネス」。*
「日本盲導犬総合センター盲導犬の里 富士ハーネス」。*
「富士山世界遺産センター」。**
「ベルナールビュッフェ美術館」。*
世界遺産の「韮山反射炉」。*
「東海館」外観。**
「東海館」で記念撮影。**
(*印撮影:押川照三、**印撮影:志知久仁彦)
 毎年恒例の4ブロック研修旅行を板橋支部主催で行った。今回の旅の目的は、東京近郊にある世界遺産や優良な建築物を見ながら関東近辺の魅力を再確認しようというもので、御殿場や伊豆を中心に企画をした。
 1日目最初に向かったのは、千葉学さん設計の「日本盲導犬総合センター盲導犬の里 富士ハーネス」。いくつもの賞を受賞した建物で、富士山の麓にある広大な敷地を盲導犬の育成や余生の場として活用する施設である。現地では、ご自身も視覚障害者である方に、施設の概要と盲導犬の育成などについて説明していただき、さらには、点字ブロック設置位置などわれわれでは気づきにくい部分の話をうかがってたいへん勉強になった。
 次に向かったのは、坂茂さん設計の「富士山世界遺産センター」。外観では逆円錐形の木格子が形づくる逆さ富士が前面の水盤に映り込み、来館者に「富士山」の姿を見せてくれる。木格子の中では地上5階までの螺旋斜路が設置され、登りながら文化遺産としての富士山を学び、最上階まで登ると眼前に本物の富士山を一望でき、そのスケールを体感できる演出である。文化面と実際の富士山のスケールを感じることで、日本人の文化として根付いてきた富士山の魅力を再認識できる、とても凝った演出がなされた施設であった。
最後に訪れたのは、菊竹清訓さん設計の「ベルナールビュッフェ美術館」。大胆な構成の展示空間は、三角形の大展示室、小品を展示する円形の回廊展示室、企画展示用の矩形の中展示室の3つの空間で構成されている。大胆な形ながら、意匠的な演出を極力控え、ビュッフェの力強くも悲しげなタッチを鑑賞するにふさわしい空間であった。隣に立つ同じ設計者の「井上靖文学館」は、渋滞により遅れたため観覧ができなかったが、造形がすばらしく改めて訪れてみたいと感じる建物だった。
 2日目は、世界遺産の「韮山反射炉」を訪れた。この反射炉は、江戸時代末期、欧米諸国に対抗して日本を守るため、時の代官・江川太郎左衛門英龍が幕府に進言して築いた大砲鋳造炉である。
 ここから日本産業が発達し、列強国に引けを取らない産業立国として台頭する。その始まりとして実際に稼働したことが確認され、日本の急速な近代化の道を開いた施設としてたいへん貴重な文化遺産となっている。
 最後に向かったのは、伊東市にあるかつての旅館「東海館」。木造の旅館は、3人の棟梁を各階ごとに競作させたこともあり、それぞれ違った職人の技と凝った意匠を見ることができる。今ではなかなか見ることのできない木造の造形美を感じる豪華な建物であった。
 魅力的な建物をめぐる旅は、あっという間に過ぎ、食事や宿泊先では、他支部の会員の皆様と楽しく交流することができた。訪問先では新たな魅力も確認でき、参加者からはまた訪れたいとの声も聞かれ、東京近郊の魅力を再発見できた旅になったことを嬉しく思う。
押川 照三(おしかわ・てるみ)
建築家、+A一級建築士事務所代表、東京都建築士事務所協会板橋支部
1995年 大阪芸術大学芸術学部建築学科卒業/1998年 日本大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻修了/1999年 株式会社ウシダ・フィンドレイパートナーシップ入社/2001年 株式会社ゼロワンオフィス入社/2005年 +A一級建築士事務所設立