第39回建築士事務所全国大会参加と見学旅行レポート
中田 千恵子(『コア東京』編集委員、東京都建築士事務所協会北部支部)
井桁 正美(東京都建築士事務所協会渋谷支部)
栗田 幸一(東京都建築士事務所協会台東支部)
「茨城県立県民文化センター」大ホールでの式典。(撮影:井桁 正美)
大会会場アプローチのイチョウ並木。
「水戸の梅大使」のみなさん。
記念パーティでの演奏。(撮影:中田 千恵子)
大会プログラムと記念パーティ
 降り出しそうな空模様だったが、雨も退散したようだ。第39回建築士事務所全国大会(茨城大会)には沖縄から北海道まで全国から、総勢1,548名、東京からは144名の会員の参加で、会場は溢れていた。
 茨城県は東日本大震災を経験している。茨城県建築士事務所協会の会員たちが建築の専門家として真摯に向き合い、建築文化に貢献し、見事に復興した成果を「復興の歓び」と大会テーマに掲げた。大会スローガンは「彰往考来のこころに学ぶ」(彰往考来:過去をあきらかにして未来を考えるという意味。水戸校もっとしても知られる第2代藩主徳川光圀は大日本史編纂の史局を「彰考館」と名づけた)であった。
 わが東京都建築士事務所協会北部支部は、今回、近隣県のため現地集合、現地解散とした。午前10時受付開始だったが、最初のプログラムの対談が12時45分からだったので、日事連建築賞作品展の鑑賞時間をみて、11時ごろ到着予定の特急に乗った。
 水戸駅の改札口を出ると、会場地図を持った案内人が待機していてホッとした。聞くところ、歩ける距離とのことで、カメラ片手に散策気分で歩いて15分ほどで式典会場に到着。会場では着物姿の「水戸の梅大使」が迎えてくれた。水戸市の観光PRスタッフで、毎年公募で10名選ばれるそうだ。さすが、歴史ある街。
 大会は、「鈴木暎一茨城大学名誉教授と弘道館事務所の資料研究業務嘱託員の小圷のり子さんの対談「弘道館の震災復旧事業に携わって──その過去・現在・未来を考える」で始まった。引き続き、古谷誠章さんと妹島和世さんの基調講演「人々の集まる、しなやかな建築」では、世界で活躍する建築家の作品群を堪能した。午後4時からの大会式典(日事連建築賞表彰、功労者表彰等)も滞りなく進行した。功労者表彰の一環で、東京会(東京都建築士事務所協会)が会員増強に貢献があったとして表彰された。
 記念パーティは別会場の「水戸プラザホテル」で行われた。満員のバス移動で30分程度。「どこまで行くの」と思うくらい長く感じたのがちょっと不満だったが、会場のホテルは立派で一気に不満が吹き飛んだ。げんきんなものだ。ここでも梅大使が活躍して、華やかで楽しいパーティだった。
 来賓の挨拶、大内達史一般社団法人日本建築士事務所協会連合会会長の挨拶、にぎやかに鏡開きと続き、乾杯となる。再来年の会場となる和歌山の紹介も興味を惹かれる楽しいものだった(来年は東京開催)。
 宴の後半、茨城県出身だという「寺内タケシとブルージーンズ」の演奏があった。「今日はオヤジばっかりだーっ!」の一声から始まり、ど迫力の演奏に皆、けっこうのっていた(?)と思う。日帰りにしたため帰りの電車が気になり、途中で後ろ髪を引かれる思いで会場を後にしたが、はじけるようなビートがしばらく頭の中を占領していた。忘れられない全国大会のひとつとなった。
 もちろんお土産は梅酒と納豆。
(中田 千恵子)
重要文化財、弘道館正庁(学校御殿)。大会では、震災復旧についての対談があった。(撮影:井桁 正美)
水戸芸術館の館内を見学。
水戸偕楽園好文亭前で第3ブロック集合。
昼食会場の山翠。(撮影:井桁 正美)
第3ブロック見学研修会
 一般社団法人東京都建築士事務所協会第3ブロック(品川、目黒、大田、渋谷、世田谷支部)は、2015年10月16日(金)〜17日(土)に毎年恒例の見学研修会を開催した。今回は1日目に建築士事務所協会全国大会(茨城大会)に参加し、2日目は水戸市を中心に見学した。今回の研修会は幹事支部である品川支部に企画からアテンドまでご尽力いただき、至れり尽くせりの研修旅行であった。
 全国大会(茨城大会)の大会式典では東京会を代表して世田谷支部の広瀬淡さんが年次功労者として表彰された。
 翌日の見学は水戸偕楽園から始まった。東門でガイドと落ち合い園内を回った。この偕楽園は水戸藩第9代藩主、徳川斉昭が庶民にも開放する目的で天保12(1841)年から造園工事を行い、翌年の7月に開園した。偕楽園の名称は「孟子」の「古の人は民と偕に楽しむ、故に能く楽しむなり」という一節からとったものだそうで、この庭園の構想は現代の公園に近い庭園といわれている。斉昭はたいへん梅を愛したといわれ、園内には多くの梅の木が植えられており、その数は約100品種、3,000本にのぼる。
 次に訪れたのは水戸芸術館。この水戸芸術館は磯崎新氏による設計で、水戸市制百周年(1989年)を記念して建てられ、高さ100mの塔をシンボルとし、コンサートホール、劇場、現代美術ギャラリーの3つの専用空間で構成された複合文化施設である。ここでもガイドにお願いして館内を案内してもらった。この水戸芸術館は1990年に開館して以来、音楽、演劇、美術の各分野において、自主企画による事業を行い、国内外で活躍するアーティストの多彩な催し物を紹介するほか、地域の文化活動の拠点としてもその活動の輪を拡げており、これからも水戸から世界へ、芸術文化の創造と発信を続けていくという。館内見学の最後はシンボルの塔に登り水戸市内を一望した。
 昼食は創業70年あんこう鍋の老舗「山翠」でとったが、季節のためか、予算の関係か、残念ながらあんこうを口にすることはできなかった。
 昼食後、午後最初の見学地である「弘道館」に向かった。この弘道館は旧水戸藩の藩校として建てられた建物で徳川斉昭が推進した藩政改革の重要施策のひとつとして開設された。藩校として全国一の規模を誇る敷地内には学問を学ぶ「文館」、武術を修練する「武館」、「医学館」、「天文台」、「馬場」、「調練場」などがあり、今でいう総合大学のような施設である。ここでは藩士とその子弟が学び、入学は15歳からで卒業はなかったという。その後、幕末の動乱期を経て県庁舎や学校に使用され、1964(昭和39)年に国の重要文化財に指定されている。戦火を免れた建物は当時のままで、いにしえの生活の様子が垣間見られた。ガイドによると、この建物も先の震災で被害を受け、修復されたと説明を受けたが、前日の対談を聞いていたので理解は容易にできた。その後、茨城県陶芸美術館を見学し帰路についた。
(井桁 正美)
大会会場の「茨城県立県民文化センター」前で台東支部の面々。
屋根が美しい大洗磯前神社本殿。(撮影:栗田 幸一)
境内のスギ材で再建された鹿島神宮の大鳥居。当初は茨城県笠間市稲田産の御影石製だった。
地震を鎮めているとされる要石。(撮影:栗田 幸一)
台東支部見学旅行
 台東支部は毎年、建築士事務所全国大会に多数の会員が参加しています。今年も早い時期から幹事を決め、バスをチャーターして大会参加と翌日の見学旅行を企画。平成27・28年度の第2ブロック担当支部なので、同ブロックの文京・荒川・北の各支部にも同行を提案しましたが、これはまとまりませんでした(誠に残念。品川・目黒・大田・渋谷・世田谷の第3ブロックのようになりたいもの)。
 当日朝、浅草に集合し、計9名(当初は10数名の参加でしたが)の会員が車中の人となりました。まずは昼食場所、水戸市見和にある「レストランイイジマ」へまっしぐら(幹事が事前に調査済み)。「常陸牛」の名店のランチは流石に絶品でした。食後、「日本外交のあゆみ」展が開催されている「茨城県立歴史館」を見学。お恥ずかしい話ですが、「ペリー」と「ハリス」を混同していたことが分かりました。
 タイムアップとなり大会会場の「茨城県立県民文化センター」へ。地元の方々のテント出展を見ながら登録場所へと向かいました。3ブロックの方々がいらしたので挨拶をして入口へ。和服のお嬢さん方(水戸の梅大使)から封筒をもらって進むと、正面で高橋浩事務局長と岡田和哉さんが出迎えてくれました。今年は資料が椅子に置いてあるとのことで、IDカードを首にかけ会場内に入りました。
 大会の内容の詳細は『日事連』(日本建築士事務所協会連合会の会報誌)2015年12月号へ譲ります。
 大会、記念パーティが終了し、チャーターバスに乗ろうとすると、車内は早くもカラオケ大会で、見知らぬ方々が歌っています。「エッ! バスを間違えた」と思いきや、後ろの座席には見慣れた顔。後で聞くと「福島会」の方々が歌っていたとのこと。ここでも友好を深めていたとは……。恐るべし全国大会。旅館に着くと3ブロックの方々にここでもお会いし、友好を深めました。遅い時間でしたが早速大浴場へ。このお湯は神社から引いている神泉を沸かしているのだとか。夕食後は台東支部恒例の夜間市内探訪……。
 翌日は曇りの予報が外れて小雨。ビールをグラス2杯くらい飲んでの朝食は旅行に来た実感が湧きます。食後のコーヒーを海を見ながらゆっくりと味わってから、「大洗磯前神社」に参詣。磯辺にも鳥居がありなかなかのもの。大己貴命 (大国主命の別名)が主祭神で、配祀神に少彦名命が祀られていました。本殿は一間社流造で茅葺き屋根が印象的です。
 続いて「鹿島神宮」へ。
 「茨城県立カシマサッカースタジアム」の横を通り過ぎていくと、午後から「鹿島アントラーズ」と「柏レイソル」の一戦が始まるとのことで、茨城県出身者と千葉県出身者が互いに引き下がれない様子(帰宅してから確認すると、アントラーズの勝利)。
 鹿島神宮にお参りしたのはいつだったか、もう10数年経っているだろうか? と、塚原卜伝の話などをしながら境内へ。境内は東日本大震災で多大の被害を受け、あちらこちらに修復跡や新築の建物が見受けられました。大鳥居は当初は茨城県笠間市稲田産の御影石(稲田石)でしたが、震災で倒壊し、現在は境内にあったスギ材で再建されています。震災復興というと東北地方ばかりを意識してしまいますが、茨城県や千葉県についても、まだまだ考えなければならない課題があります。鬱蒼と茂る参道、新旧大直刀、要石等々を拝見しました。夕方浅草へ到着。
 台東支部会員が設計した居酒屋で恒例の反省会をして帰路につきました。
(栗田 幸一)
中田 千恵子(なかた・ちえこ)
建築家、一級建築士事務所ハウジング工房代表、(一社)東京都建築士事務所協会編集専門委員、北部支部
1953年東京生まれ/インテリア設計事務所スペース201、日研学院講師を経て現在、一級建築士事務所ハウジング工房代表/(一社)東京都建築士事務所協会編集専門委員
井桁 正美(いげた・まさみ)
建築家、オルカ一級建築士事務所代表
1960年東京都生まれ/1983年 東京工芸大学工学部建築学科卒業後、株式会社エム建築事務所/1989年 株式会社エイムクリエイツ/1996年 イゲタ建築・デザイン事務所開設/2012年 オルカ一級建築士事務所に事務所名を変更
栗田 幸一(くりた・こういち)
建築家、株式会社栗田建築事務所所長、(一社)東京都建築士事務所協会台東支部支部長、編集専門委員会委員長
東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970〜74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在に至る