「コンクリート構造物の補修保全に関する基礎知識」セミナー
青年部会|令和元(2019)年5月9日@本会会議室
村田 雅利(東京都建築士事務所協会足立支部支部長、青年部会監事、株式会社村田建築事務所)
会場風景。(撮影:筆者)
 スクラップ&ビルドという「フロー型社会」から、省資源な循環型・低炭素の実現に向け「ストック型社会」への移行が求められ、建築物の長寿命化に対して高い関心が寄せられる中、青年部会では、「コンクリート構造物の補修保全に関する基礎知識」と題するセミナーを開催した。講師はリフリート工業会より太平洋マテリアル株式会社の酒井則之さんと齋藤睦さんのおふたりで、90名の参加者を集めた。
 脇宗一郎青年部会長より、オリンピックが開催される来年以降は、改修・改築工事が増えるのではないか? この講習会を日ごろの業務に活かしていただければとの挨拶から始まり、講師からリフリート工法とリフリート工業会についての説明があった。
 リフリート工法は、コンクリートの中性化や塩害等による劣化、または劣化の恐れのあるコンクリート構造物の補修・改修・予防保全を目的に開発された工法であり、本工法で使用されるすべての材料は、現場で一切加水しない管理された材料とのことである。またリフリート工業会は工法を普及、発展させるべく全国300社に及ぶ改修等の専門工事会社からなる「施工部会会員」と、太平洋マテリアル株式会社・太平洋セメント株式会社及び日産化学工業からなる「材料部会会員」によって構成され、1981年に設立されて今日に至っている。この工業会では「リフリート工法施工管理士」という制度があり、毎年「施工管理士講習会」が開催され、コンクリートの劣化・工法のメカニズム・仕様組立・施工方法等を習得すべく認定試験が実施されている。
 施工実績は、1976年の第1号物件以来、四十数年に及ぶ経歴があり、著名な物件を始めとして豊富なようである。さらにいっそう工法を推進すべく、昨年はリフリート工法の新仕様、RF REBORN工法やRFダクタル工法等4つの工法を新たな需要に備えリリースしたとの報告と、その概要の説明をいただいた。
 昨今、維持保全・構造物の長寿命化等が官民問わず社会的にニーズ化しており、その中で本工法は、劣化原因に応じた的確な改修仕様、たとえば中性化補修、火災・凍害並びに塩害補修・鉄筋防錆等の仕様を整備している。劣化要因に応じた補修方法・材料の選定等の具体的な内容まで、実務に直結するセミナーとなった。
 会場を移動して34名の方が参加した懇親会でも講師に質問をされる会員もおり、補修に対する会員の意識の高さを実感した。今後この講習が、会員各位の改修実務への契機になることを願いたい。
村田 雅利(むらた・まさとし)
株式会社村田建築事務所、(一社)東京都建築士事務所協会足立支部支部長、青年部会監事 1972年生まれ/1994年日本工業大学工学部建築学科卒業