VOICE
前田 敦(東京都建築士事務所協会会誌・HP専門委員、青年部会、八王子支部、前田一級建築士事務所)
今日は晴天! 寒さからもようやく解放され、心地よい陽気の中、駅までの道すがら丘の上の先の先までひたすら続く綺麗な住宅群やマンション群を何となく眺めつつ、昨今の住宅事情についてふと考えた。
私の住む街の丘の上、多摩ニュータウンには、まだ多くの住宅用地が確保されている。民間でも住宅の開発がここそこで行われている。その一方で、数100メートル先の古い住宅団地では高齢化、過疎化が進んでゴーストタウンとなりつつある。そのような開発されてから40〜50年経つ住宅団地の擁壁(間知石)は、どこも老朽化が進み、補修もできず、破れたままにているところも少なくない。建物に対する地震対策や施策は行われているものの、そのような工作物等に関してのそれはあまり聞かない。地震が来たら崩れてしまいそうなところにわざわざ建て替えしたくないと思うのは当たり前のことだ。スクラップアントビルドの時代は終わったなどとよく聞くが、供給過多な気も……。今あるものを使うのは無理なのかぁ?……。企業の利益至上主義ゆえの開発造成?……。
公共の施設や、企業が行う商業施設が新しくなっていくのはなんとなく想像ができるし、現に東京駅周辺では既に行われていてより良いものができている。しかし、戸建住宅や分譲マンションなど個人のものの場合はどうなって行くのか? 核家族化が進み、実家に戻らない人たちも多くいる。持ち主の分からない建物や、持ち主のいなくなったマンションなども膨大な数になり、100年後には今ある住宅団地がみんなゴーストタウン化してしまうのではないか? なんて考えていたら、丘の上に広がる空に暗雲が立ちこめてきた気がした。
前田 敦(まえだ・あつし)
前田一級建築士事務所、東京都建築士事務所協会青年部会、八王子支部
1967年 東京都生まれ/1988年 東京工科専門学校卒業/1997年 株式会社木下工務店設計部退社/1998〜2008年 10年間建築を離れ、デザイン会社で、サイン・CI・チラシ等のデザインを行う/2008年 前田一級建築士事務所設立
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