細い路地が平行に何本も走っていて、それぞれ何番街と名前が付いている。ほとんどの建物は二階建てになっている。
ゴールデン街は何軒もハシゴするという酔っぱらい同士の鉄の掟がある。つまりここを歩く人はみんな酩酊している梯子の途中にいる人たちなのだ。今回のようにシラフで描いてみるのも面白い。次々と外国人が通り過ぎていく。(本当に多い!)
いつも、記憶を頼りに店を目指すのだが、とにかく見つからない。酔っぱらいには何番街なのかわからないようにできているらしい。ここ、ここ、と思って目当ての店の前に来たはずなのに、一本隣だった、ということが頻繁に起きる。
花園神社の不思議な力が定期的にバーの位置を入れ替えている。そうでなければ説明できない。電線や屋外機が露出していてぐるぐるに絡まっているのも、きっとそのせいだろう。寒空のなか夜に目を凝らすと、この小路の壁は電気メーターなど普段は出さないように設計しているものがたくさん表に出ている。まるで内臓をさらされた人体模型みたいだ。
特定の通りを描くことはやめた。どうせ三日後にはまた入れ替わってしまうし。この街の魅力は何といってもたくさんの看板だ。文壇やサブカル界の有名なバーの名前が光り輝いている。初めからその光を描こうと思って黒い紙と白いペンを持ってきた。誰の記憶の中でもゴールデン街はいろんな看板がキラキラと秩序なく並んでいるのだ。
座二郎(ざじろう)
東京都建築士事務所協会千代田支部、通勤漫画家・絵本作家、前田建設工業株式会社勤務
1974年東京生まれ/2000年早稲田大学大学院卒業後、前田建設入社。現在に至る
1974年東京生まれ/2000年早稲田大学大学院卒業後、前田建設入社。現在に至る
カテゴリー:歴史と文化 / 都市 / まちなみ / 保存
タグ:スケッチ