東京消防庁からのお知らせ 第21回
渡り廊下等で接続された建築物の消防用設備等の設置単位について
東京消防庁予防部予防課
1 はじめに
 建築物には消防法により消火器、自動火災報知設備、屋内消火栓などの消防用設備等の設置が義務付けられています。消防用設備等の設置は本誌9月号で紹介した令8区画、同10月号で紹介した令9適用等が適用される場合を除き、原則として建築物の棟を単位としています。例えば、渡り廊下等で建築物と建築物とが接続されている場合、消防用設備等の設置単位は1つの建築物として取扱います。ただし、渡り廊下等で接続されている建築物同士が一定の要件を満たしている場合、それぞれを別の建築物として取扱うことができるとしています。
 本稿では、別の建築物として取扱うことができる渡り廊下及び地下連絡路の基準をご紹介します。
2 渡り廊下
 建築物と建築物とが地階以外の階で渡り廊下により接続されている場合で、次の(1)から(3)までに適合する場合は別の建築物として取扱うことができます。

(1) 渡り廊下は、通行又は運搬の用途のみに供され、かつ、可燃物物品等の存置その他通行上の支障がない状態であること。

(2) 渡り廊下の有効幅員は、接続される一方又は双方の建築物の主要構造部が木造の場合は3m未満、その他の場合は6m未満であること。

(3) 接続される建築物相互間の距離は、1階は6m、2階以上の階は10mを超えるものであること(図❶)。
図❶ 建築物相互間の距離
 (3)の代わりに次のアからウまでに適合する場合も別の建築物として取扱うことができます。

 接続される建築物の渡り廊下の接続部分からそれぞれ3m以内の距離にある外壁及び屋根は、次の(ア)又は(イ)によること。
 (ア) 耐火構造又は防火構造で造られていること。
 (イ) 防火構造の塀その他のこれらに類するもの又は閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備若しくはドレンチャー設備で延焼防止上有効に防護されていること。

 前アの外壁及び屋根には、開口部がないこと。ただし、外壁及び屋根の開口部面積の合計がそれぞれ4㎡以下で防火設備が設けられている開口部であれば、設けることができます(図❷)。
図❷ 渡り廊下の接続部から3m以内にある開口部の制限
 なお、建築物相互間の距離が3m以上で渡り廊下が準不燃材料で造られたものは、開口部面積を問わないことができます。

 渡り廊下は次の(ア)又は(イ)によること。
 (ア) 吹き抜けなどの開放式で、建築物との接続部には防火設備が設けられていること。開放式の渡り廊下は、a又はbに適合すること。
 a 次の(a)及び(b)に適合すること(図❸)。
 (a) 建築物相互間の距離が1m以上であること。
 (b) 渡り廊下の両側の壁の上部が天井高の1/2又は1m以上廊下の全長にわたって直接外気に開放されていること。
図❸ 両側の壁が開放された渡り廊下
 b 次の(a)から(c)までに適合すること(図❹)。
 (a) 建築物相互間の距離が1m以上であること。
 (b) 渡り廊下の片側の壁の上部が天井高の1/2又は1m以上廊下の全長にわたって直接外気に開放されていること。
 (c) 渡り廊下の中央部に火災及び煙の伝送を有効に遮る構造の垂れ壁が設けられていること。
図❹ 片側が開放された渡り廊下
 (イ) 次のaからdまでに適合すること。
 a 建築物相互の距離は1m以上であること。

 b 構造耐力上主要な部分は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とし、その他の部分は準不燃材料で造られていること。

 c 建築物の両端の接続部に設けられた開口部は次の(a)及び(b)に適合すること。
 (a) 面積の合計はそれぞれ4㎡以下であること。
 (b) 防火設備で、随時開くことができる自動閉鎖装置付のもの又は煙感知器の作動と連動して自動的に閉鎖する構造のものが設けられていること。

 d 一定の基準に適合する自然排煙用開口部又は機械排煙設備が排煙上有効な位置に、火災の際容易に接近できる位置から手動で開放できるように又は煙感知器の作動と連動して開放するように設けられていること。ただし、閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備又はドレンチャー設備が設けられている場合は、自然排煙用開口部等を設けないことができます。
3 地下連絡路
 建築物と建築物とが地下連絡路で接続されている場合で、次の(1)又は(2)に適合する場合は別の建築物として取扱うことができます。
 なお、天井部分が直接外気に常時開放されているものはここでいう地下連絡路に該当しないので、別の建築物として取扱います。

(1) 地下連絡路の長さ(地下連絡路の接続する両端の出入口に設けられた防火戸相互の間隔をいう。)が20m未満の場合、次のアからクまでに適合すること(図❺)。
 接続される建築物又はその部分(地下連絡路の接続されている階の部分をいう。)の主要構造部は耐火構造であること。

 地下連絡路は、通行又は運搬の用途のみに供され、かつ、可燃物品等の存置その他通行上支障ない状態であること。

 地下連絡路は耐火構造とし、かつ、その天井、壁及び床の仕上げ及び下地は、不燃材料で造られていること。

 地下連絡路の長さは6m以上であり、その幅員は6m未満であること。ただし、双方の建築物の接続部に閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備又はドレンチャー設備が延焼防止上有効な方法により設けられている場合は長さを6m未満、幅を6m以上とすることができるが、長さはできるだけ2m以上とすること。

 建築物と地下連絡路とは、地下連絡路の両端の出入口の部分を除き、開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されていること。

 前オの出入口の開口部の面積は4㎡以下であること。

 前オの出入口には、特定防火設備で随時開くことができる自動閉鎖装置付のもの又は随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖するものが設けられていること。

 2渡り廊下、(3)、ウ、(イ)、dにより排煙設備が設けられていること。ただし、閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備が設けられている場合は排煙設備を設けないことができます。
図❺ 地下連絡路の構造(長さ20m未満の場合)
(2) 地下連絡路の長さが20m以上の場合
 前(1)のア、イ、ウ及びオ並びに次のア及びイに適合すること(図❻)。
 地下連絡路の幅員は6m未満であること。

 接続部には、特定防火設備で随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は煙感知器の作動と連動して自動的に閉鎖するものが設けられていること。
図❺ 地下連絡路の構造(長さ20m未満の場合)
4 おわりに
 建築物同士の接続が、前2及び前3に掲げる条件に適合しない場合であっても、その特殊性から火災の延焼拡大の要素が少ないもの又は社会通念上から同一の建築物として扱うことに不合理を生ずるものについては、個別に検討することもあります。
 消防用設備等の設置単位は、建築物に設置が義務付けられる消防用設備等を決定する上で、重要な事項ですので、建築物と建築物とが接続される場合は、事前に管轄の消防署とよくご相談ください。
記事カテゴリー:建築法規 / 行政