思い出のスケッチ #299
アイコンの統合──オリンピアとデルフィ
鈴木 俊作(東京都建築士事務所協会中央支部/株式会社協立建築設計事務所)
 アテネの西三二〇キロメートル、丘の麓に広がる牧歌的な美しい村、一九六四年、二〇二〇年の東京オリンピックの聖火も、ギリシャ神殿の中でも最も古いもののひとつとして、盛時の面影の数本の柱が残っているヘラ神殿から始まる。近くには、古代オリンピックの競技場の聖地の入り口がある。石組みのアーチの頂点の石は要石と呼ばれている。このアーチを潜ると競技場が広がる。
 ギリシャ本土を背骨のように南北に貫くピンドス山脈、ここの東側は、中部ギリシャであり、アテネの北西約一八〇キロメートル、パルナッソス山の南麓に古代ギリシャの聖域、デルフィは太陽神アポロンが神託を行う「世界のへそ」と考えられていた。眼下にオリーブ畑、遠くにコリンティア湾を望む。ここには、古代円形劇場や、アテナ・ブロナイア神域にあるトロス(円形建物)がある。この地域の近くに、斜面に張り付き、生活観溢れる狭く急な階段を主軸とした街アラホバがある。
 心象風景をシンボルマークとし、それらをひとつの物語にして、再統合させる。アイコン・色彩は全体とのバランスにより変化する。さらに線は、マウスで描くために、曲がったり、捩れたり、はみ出たりする。この絵の表現・技法は、瞬時に思い出を彷彿させる。
鈴木俊作(すずき・しゅんさく)
1949 年東京都生まれ/日本大学卒業/ 2003 年〜株式会社協立建築設計事務所/東京建築賞、最優秀賞受賞