思い出のスケッチ #298
アイコン(場所性)──ミコノスとパルテノン
鈴木 俊作(東京都建築士事務所協会中央支部/株式会社協立建築設計事務所)
描くことをひとつの目的として、ひたすら描いてみたら、そこから浮かび上がってきたのは、端的に表すことの重要性であった。そこで、最もシンプルに、スタンプ的に表現することの第一段階として、色鉛筆で、各々の特徴を活かしたサインをつくるつもりで描いてみる。
ミコノス(迷路と広場)の道は狭く、曲がりくねっている。この迷路は、街の中のどこにいても非常に立ち位置が分かりやすいのは、港に向かう道が斜路(扇状)になっているからである。港は日本の漁港と違い、磯の香りがまったくせず異国を感じさせるが、小路の石畳の漆喰の白が壁まで立ち上がって一体感をつくり、安心感を与えている。
アテネでは、念願のアクロポリスの丘にあるパルテノン神殿へと向かう。神殿の入口のプロピアレ(前門)は工事中であったが、神殿も常に修復され続けている。紀元前四三八年に建てられたこの神殿は、遠くからは直線と平面の組み合わせに見えるが、近づくと曲線と曲面から成り立っている。また、別神殿の六人の少女像は丘全体を柔らかくしている。円柱の加工精度はきわめて高く、ドラムの接合面を密着させるために、円盤を二枚つくり、一〇〇分の一ミリの精度で密着させるようにつくっていたとは、誰もが驚嘆する。
鈴木俊作(すずき・しゅんさく)
1949年東京都生まれ/日本大学卒業/2003年〜株式会社協立建築設計事務所/東京建築賞、最優秀賞受賞