多様な働き方の注意点
連載:社労士豆知識 第6回
畑中 義雄(畑中社会保険労務士事務所 所長)
多様な価値観が認められる時代になり、働き方もさまざまな形態が見られるようになってきました。会社側からすれば、変化に対応できる柔軟な組織をつくることができ、働く側からすればより自分の考えやライフスタイルに合った働き方が選べるようになったといえるかも知れません。しかし、雇う側も働く側も、どのような契約になっているのかをはっきりと共有しておかなければ、思わぬトラブルになることもあります。最近よく見られるようになった「働き方」を確認しておきたいと思います。
働き方と各種制度の適用区分
労働者かそれ以外なのか?
 まず注意しなければいけないのは、「労働者」として働いているのか、それ以外の契約なのかという点です(下表参照)。労働者であれば、労働基準法などのすべての労働関連法令の適用対象者として保護されます。たとえば、各都道府県で決められている最低賃金以上の賃金が保証されますし、仕事中や通勤中に怪我をした場合は、労災保険から給付を受けることができます。労働者以外であればこのような保護を受けることはできません。
 労働者以外といえば、まず役員が挙げられます。ただし、最近は登記をせずに「執行役員」という役職をつくっている会社も多いですが、このような場合は、法的にいえば「労働者」にあたるので注意が必要です。
 またインターンやフリーランサーといった働き方も増えてきています。
 インターンは一般的には学生などが「職業体験」を実際の会社で行うことをいいます。あくまでも「体験」なので、会社は労働者のように厳格に指揮命令することはできません。フリーランサーはいわゆる「取引業者」といった扱いになります。会社は一定の仕事を委託して、その仕事の進め方などを細かく指示することはできません。いずれの場合もしっかりと契約を書面で結び、労働者との区別をしておくべきです。
 なお、たとえ契約がインターンやフリーランサーになっていても、実態が労働者と見なされる場合は、残業代の支払いが会社側に求められるようなこともあります。
社会保険などの取り扱い
 社会保険(健康保険・厚生年金)は、おおむね正社員の4分の3以上勤務する者であれば、役員も含めて会社で加入することができます(この条件に該当した場合は強制的に加入になります)。雇用保険は週20時間以上勤務する労働者だけが加入となります。たとえパートタイマーであったとしても、上記の基準に該当する場合は、社会保険にも雇用保険にも入らなければいけません。この点、インターンやフリーランサーは法律で定められた保障がありませんので、自分で保険に入るか、会社で傷害保険などに入るなどしておくべきでしょう。
契約書などでしっかりと条件の確認を
 これら以外にも「契約期間はあるのか?」、「残業代は出るのか?」、「転勤や職務の変更はあるのか?」、「昇給や一時金・成果報酬は出るのか?」など、さまざまな働く上での条件が考えられます。事前の確認をしっかり行い、トラブルのない多様な働き方を心がけるべきでしょう。
畑中 義雄(はたなか・よしお)
タグ:社労士, 働き方, 社会保険