労働基準監督署の調査って何?
社労士豆知識 第17回
小島 信一(小島経営労務事務所 所長)
労働基準監督官とは
 労働基準監督署には「労働基準監督官」という国家公務員が配置されています。建築士の先生方にとっては、あまりなじみがないかもしれません。労働基準監督署の「署」は「所」とは書かず、警察や消防、税務署と同様に「署」の漢字を使います。これは、刑事訴訟法による「特別司法警察職員」としての権限を持っていることの証です。
 簡単にいうと、労働基準監督官は会社(使用者)に労働関係法令の違反があれば「逮捕できる」権限を持っている、ということです。さすがに、日常的に会社の社長が逮捕されているわけではありませんが、近年、労働者に過重労働を強制させ、疲弊させているような会社に対して書類送検等の厳しい措置を取る事例が増えてきています。
 労働基準監督官は、労働Gメンとも呼ばれており、事業所に立ち入り、法違反がないか目を光らせています。
臨検監督の種類
臨検監督の種類と特徴
 労働基準監督官の行う調査のことを「臨検監督」といいますが、これにはいくつかの種類があります。

①定期監督
 管轄の監督署がその年度の監督計画に従って法令の全般にわたり調査するものです。予告なく、突然事業所にやってきますので、びっくりされる方が多いです。

②災害調査
 一定以上の災害が発生した事業場に予告なく実施される調査です。

③災害時監督
 工場の爆発事故、建設現場の死亡災害などが起きた場合のその原因を調査します。

④申告監督
 退職した職員等から「残業代が払われない」等の申告(俗にいうタレコミ)があった場合に行う調査です。この調査は、緊急性が高いため即座に行われます。

⑤再監督、再々監督
 定期監督等の結果発見された違反が是正されたか確認するための調査です。ここで、再違反が見られると、厳しく指導され、時には書類送検されることもあります。

監督署の調査をうまく乗り切るには
以上見てきたように、労働基準監督官の調査には、いくつか種類がありますが、建築士事務所に対しては、定期監督、再監督あたりに直面することが今後あるかもしれません。もしも、自分の事務所に労働基準監督官が来たときどうすればいいのでしょうか? 対策は、月並みですが、労働関係法令を遵守することに尽きます。とはいえ、時代により、調査ポイントの主眼には変遷が多少あります。近年の監督ポイントは主に次のようなものです。
近年の傾向として、若者の使い捨てが起きないよう、ブラック企業への取り締まりが厳しくなっています。残業させない、残業代は払う、ここが調査ポイントです。それと、健康診断実施状況なども見られるようになっています。
小島 信一(こじま・しんいち)
小島経営労務事務所 所長、社会保険労務士
1968年 静岡市生まれ/1991年 常葉学園大学卒業/2007 年 台東区で小島経営労務事務所設立/ 2010 年 事務所を東上野に移転
記事カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士