「復元カップ・マルタンの休暇小屋」見学+セミナー
文京支部
三上 紀子(レジオン・コンサバティブ(株)一級建築士事務所代表取締役、東京都建築士事務所協会文京支部)
「復元カップ・マルタンの休暇小屋」内部。調和のとれた最小の空間。
復元を指導した藤原成暁ものつくり大学教授の詳細な説明に耳を傾ける参加者。
「復元カップ・マルタンの小屋」の前での集合写真。
 平成28(2016)年2月21日、東京都建築士事務所協会文京支部の主催で、「復元カップ・マルタンの休暇小屋」の見学会が行われました。
 埼玉県行田市の「ものつくり大学」のキャンパス内に建つ「復元カップ・マルタンの休暇小屋」は、ル・コルビュジエの設計による自身の終の棲家の原寸レプリカです。2011年に同大学の教員と学生たちが渡仏し、現地で実測調査を行い、帰国後、同校の建設・製造両学科の協働により、学生の手によって建設されたものです。ネジ1個から建築金物、照明、家具に至るまで、見事に再現されています。
 見学に先立ち、ものつくり大学建設学科長藤原成暁教授によるセミナーをお聴きしました。藤原先生は、実際に学生たちと共にカップ・マルタンの地を訪れ、休暇小屋の実測に携わられています。カップ・マルタンの休暇小屋は、海と山手の村との関係性によって環境として完結すること、休暇小屋は1952年の作品でマルセイユの「ユニテ・ダビタシオン」と同年の作品であり、その3年後の1955年に「ロンシャンの礼拝堂」が完成していることを教えていただきました。
 セミナーの後、実際に復元された休暇小屋の中に入ってみました。最初に目に飛び込んだのは、壁に取り付けられた窓枠の隙間からの光です。小さな壁面に取り付けられた窓、その形と配置はル・コルビュジエによって丹念に計算されデザインされたことを物語っています。わずか10畳ほどの大きさの小屋の内部には、大きなテーブルが備え付けられ、本棚、ベッド、手洗い、トイレ、収納がさりげなくしつらえられています。そこはプライベートで過ごすには過不足ない空間であり、簡素でありながらとても心地良い場所で、まさしくパーソナルスペースであり胎内空間です。「建築家である前に、すぐれた生活学者でなければならない」というル・コルビュジエのことばが残っているそうです。
 ル・コルビュジエの黄金時代といえる時期に設計された休暇小屋。日本に居ながらにして、巨匠ル・コルビュジエの珠玉の空間を体感することできた貴重な機会でした。
三上 紀子(みかみ・のりこ)
レジオン・コンサバティブ(株)一級建築士事務所代表取締役、東京都建築士事務所協会文京支部
大阪市立大学生活科学部住居学科卒業、東京大学大学院新領域創成科学研究科修了、住宅設計、リノベーションなど住空間を中心に、こどもクリニック・保育園等の設計監理を手掛ける。最近は文化的建造物の保存修復活用事業にも携わっている。
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