太陽光発電設備に係る防火安全対策の指導基準について
東京消防庁からのお知らせ 第4回
東京消防庁予防課
はじめに
 近年、太陽光発電設備の普及が急速に進んでいます。太陽電池モジュール(以下、PVモジュール)が建物に多量に設置された場合、PVモジュールの材料が延焼拡大要因になることや、消防活動中の消防隊員の感電危険が危惧されています。
 そこで東京消防庁では、平成25年度に太陽光発電設備に関係する外部有識者を交えた「太陽光発電設備に係る防火安全対策検討部会」(部会長:大宮喜文東京理科大学理工学部教授、以下、検討部会)を設け、太陽光発電設備を建物に設置する際の防火安全上の課題を整理し、消防隊員の感電防止対策等について検討を行いました。
 今般、検討部会の検討結果を踏まえた「太陽光発電設備に係る防火安全対策の指導基準」を策定し、平成26年10月1日より運用を開始しました。この基準は東京都内(稲城市及び島しょ地域を除く)の住宅及び長屋以外の建物に対するものです。ここでは指導基準及び検討結果の概要を紹介します。
 なお、以下の内容については、一般社団法人太陽光発電協会(以下、JPEA)ホームページ「太陽光発電設備のレイアウト・表示について」の中で会員に対する周知を図ると共に、その遵守を推奨しています。

指導基準
(1)消防活動の安全を確保したPVモジュールの設置方法
 災害が発生した際に消防隊員が活用する屋外階段、非常用の進入口などには、感電の危険性があるため、PVモジュール等の設置を避けてください(図①参照)。また、消防隊員が安全にPVモジュール周辺の火災を消火できるように、消防隊員が活用できる活動用の通路を設けてください(図②参照)。
① 消防隊員が活用する施設周囲の設置抑制箇所
② 活動用の通路設置例(建物屋上)
(2)規制場所へのPVモジュールの緩和設置
 消防法令では、消火水槽、変電設備等(以下、屋上設備)と周囲の建物等の間の延焼を防ぐためや、屋上設備へ重大な火災の影響を与えない目的で、離隔距離を定めています。一定の条件を満足すれば、屋上設備の周囲から1mまで緩和設置できることとします(図③参照)。

③ 屋上の規制場所への緩和設置
(3)防火対象物に求める消防活動時の感電防止対策
 消防活動時に感電危険が最も多く存在するのは、PVモジュールからパワーコンディショナーまでの部分です(図④参照)。この部分は、建物の交流電力を遮断しても、PVモジュールに光があたっている間は、直流電力が充電されます。感電危険がある部分に警告の表示を行ってください。
 また、JPEAホームページにも、太陽光発電機器や直流配線に係る推奨表示が掲載されていますので参考としてください。直流配線の表示については、関係工業会において検討されており、今後、表示例として示される見込みです。
④ 感電防止の警告表示
その他の検討結果
 (1)PVモジュールの燃焼性状の検証
 PVモジュール自体が出火源となった火災は、ほとんどありません。一方で他所からの火災により強い加熱を受けた場合に、微量ですが可燃物が含まれるため、PVモジュールが延焼媒体となる可能性があります。
 そこで、PVモジュールを加熱し、その燃焼性状について検証しました。検証結果は、次のとおりです。
 ア:他所からの火災により延焼したPVモジュールの火炎及び熱等が、隣接する他のPVモジュールを延焼させる可能性は極めて低い(図⑤参照)。
 イ:PVモジュール自体が燃焼する際に発生する火炎及び熱等が、1m先の可燃物等に重大な熱的影響(発火、溶融)を与えることはない(図⑥参照)。
⑤ 隣接PVモジュールの延焼危険
⑥ PVモジュールの熱影響
(2)防火安全対策の普及に向けた連携
 消防機関とメーカー、設計、施工、保守点検等の太陽光発電関係業界の協力により、すべての設置者へ防火安全対策を働きかけることが必要です。
おわりに
 東京消防庁では、太陽光発電設備の普及を妨げることなく、消防隊員の消防活動上の安全が確保されるよう、当該指導基準を推進しております。太陽光発電設備を設置する建物の関係者、設計者、施工者の方は、事前に最寄りの消防署にご相談願います。
 なお、検討部会報告書及び当該指導基準は、下記の東京消防庁ホームページに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/
記事カテゴリー:建築法規 / 行政