令和6年度東京都への予算等に対する要望を提出
東京都議会自由民主党
都議会公明党
都民ファーストの会東京都議団
東京都議会立憲民主党
東京都住宅政策本部
東京都都市整備局
 当会は、令和元年7月に発足した東京建築設計関連事務所協会協議会(通称TARC)のメンバーである(一社)東京構造設計事務所協会、(一社)東京都設備設計事務所協会および(一社)日本建築積算事務所協会関東支部の3団体ならびに東京都建築士事務所政経研究会と共同して、東京都、東京都議会自由民主党、都議会公明党、都民ファーストの会東京都議団、東京都議会立憲民主党の5者に対して、令和6年度東京都への予算等に対する要望書を提出しました。
以下に提出した要望書を示します。

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、既存マンションの省エネ改修・再エネ導入を促進するため、省エネ・再エネ項目を含む長期修繕計画の作成に対する補助制度を充実いただきますよう要望いたします。

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネと再エネの促進はどちらも必要不可欠な取組みです。
 東京都内のマンションの総戸数は約191万戸※1(令和2年、住宅着工統計)、約4世帯に1世帯が既存マンションに居住しているという東京都の現状を考慮すると、既存マンションの省エネ改修・再エネ導入を促進することは上記目的達成のために極めて重要です。
 既存マンションの省エネ改修・再エネ導入を進めるためには、大規模修繕に合わせた設備等の省エネ化や再エネの利用が極めて有効です。大規模修繕は多くの場合長期修繕計画に基づいて実施されるため、長期修繕計画にこれらの要素が盛り込まれていることも極めて重要となります。
 しかしながら、長期修繕計画に省エネや再エネの項目を盛り込むためには建築士等の専門家の関与が必要不可欠であり、通常よりも多くの費用が必要となります。既存マンションの所有者や管理組合に対するいっそうの金銭的支援が不可欠です。
 つきましては、省エネ・再エネ項目を含む長期修繕計画の作成に対する補助制度を充実頂きますよう要望いたします。
※1東京マンション管理・再生促進計画(令和4年3月改定、東京都)

 売主・買主が安心して中古住宅を取引することができる市場環境の整備並びに既存住宅流通市場の活性化に向け、より一層の既存住宅状況調査制度の周知をお願いすると共に、既存住宅状況調査の費用を補填するための補助金制度の創設を要望いたします。

 平成30年4月の宅地建物取引業法の改正により、中古住宅の売買の際に行われる重要事項説明に、既存住宅状況調査の実施の有無及び実施している場合にはその結果について説明することが義務づけられました。
 既存住宅状況調査とは、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査です。
 この調査を実施することにより、売主は中古住宅引渡し後のトラブルの可能性を減少させ、買主も安心して中古住宅を購入することができます。このことは既存住宅流通市場の整備と活性化に繋がります。
本制度の重要性に鑑み、当会では積極的に既存住宅状況調査技術者講習を開催し、既存住宅状況調査技術者の育成に努めると共に、連合団体である一般社団法人日本建築士事務所協会連合会においても、本制度の周知・広告のために冊子を作成し、行政や独立行政法人住宅金融支援機構等の窓口に設置する等様々な取組みを行ってきました。
 しかしながら、既存住宅状況調査の実施件数は約4%と低調な状態が続いており(既存住宅状況調査の実施状況に関するアンケート調査結果、令和元年国土交通省実施)、残念ながら本制度が十分に周知されているとは言い難い状況です。さらに、既存住宅状況調査を実施する際の費用負担も、本制度の浸透の障害になっています。
 つきましては、より一層の既存住宅状況調査制度の周知をお願いすると共に、既存住宅状況調査の費用を補填するための補助金制度の創設を要望いたします。

 建築士事務所登録等事務において、財政的負担が増大しているとともに、申請・届出の受付のオンライン化による事務量の増大や受付システムのコスト負担等の必要経費も増加するため、登録事務を安定的に運営・維持できるよう、適正な手数料に改定していただくようお願いいたします。
 併せて、一級、二級・木造建築士事務所の各登録申請において事務作業量の差異がないこと、申請者間の不均衡の是正の観点から手数料の同額化を要望いたします。

 本会は、平成20年11月より、東京都から指定事務所登録機関としての指定を受け、建築士事務所登録事務(登録事務)を行っております。また、行政事務の効率化等の観点から、この度の建築士事務所登録等手続きのオンライン化に伴い、サービスの向上と円滑な移行を図るため準備を進めております。
 一方、平成27年10月に都市整備局関係手数料条例に事務手数料を改定していただいたものの、法改正に伴う関係事務の増加、消費税率の引き上げ及び物価の上昇等の影響により、管理費等の必要経費が増加しており、指定事務所登録機関としての業務運営に際し、財政的な負担が増大しております。
 また、近年、新規・更新登録する事務所数が減少傾向にあることに加え、「建築士事務所登録の際の要件について(技術的助言)」(令和5年7月3日付国住指第145号)により、今後、多店舗展開している建築士事務所の業務拠点の集約化がよりいっそう加速することが見込まれ、事務所登録数が激減していくことが予想されます。
 さらに、申請・届出の受付のオンライン化による事務量の増大や受付システムのランニングコストの負担等の必要経費も増加するため、登録事務を安定的に運営・維持できるよう、適正な手数料に改定していただくようお願いいたします。
 併せて、一級、二級・木造建築士事務所の各登録申請において事務作業量の差異がないこと、申請者間の不均衡の是正の観点から手数料の同額化を要望いたします。
※ これらの登録手数料の改定につき、建築士法に基づく同登録制度が、各都道府県ほぼ同一の事務手続きであることから、他の道府県においても、今回、同様の手数料改定の要望をしております。

 現在、都内にはリノベーション等が見込まれている築年数が経過した建築物が数多く存在しています。
既存建築物の一部を用途変更する場合、東京都建築安全条例に基づく防火・避難規定等が建物全体に遡及適用され、改修に係る合意形成や過度な費用負担等により計画を断念せざるを得ないケースも見受けられます。
 既存建築ストックを有効活用していくため、安全性の確保に配慮しつつ、東京都建築安全条例における規制の合理化を図って頂くよう要望いたします。

 現在都内には社会ニーズの変化や脱炭素の観点等から、リノベーション等により継続活用することが見込まれている高度成長期に建設され築年数が経過した建築物が数多く存在しています。
 一方、東京の観光都市化やコロナ禍によるテレワークの進展等により建物用途の変更や多様化へのニーズが高まるとともに、2050年カーボンニュートラルに向けた脱炭素の観点から建築物のライフサイクルカーボン削減が重要課題となっており、その実現のためにも全面建て替えではないリノベーションによる既存ストックの有効活用を進めて行く必要があります。
 既存建築物を用途変更してリノベーションしようとする場合(特に事務所建築を他の用途に変更する場合)、東京都建築安全条例に基づく防火・避難規定等の基準が建物全体に遡及適用されるため、建築物の一部を用途変更しようとする場合でも、他の権利者やテナントとの合意形成が必要となることや、改修工事費が非常に高額になる場合があることから、計画を断念せざるを得なくなるケースが散見される状況となっています。
 この状況を打開しリノベーションによる既存ストックの活用と脱炭素化を合わせて推進するために、防火・避難規定等に係る東京都建築安全条例の条文を用途変更申請に適用する場合において、安全性の確保を図りながらも計画が実現できるよう東京都建築安全条例における規制の合理化を図っていただくよう要望いたします。

 改修設計業務において、現況調査が十分に行われないまま、設計業務の発注が行われるケースが見受けられます。
 この場合、設計業務を受注しても現況調査から行うこととなりますが、設計業務の業務報酬だけではこの追加業務に対する業務報酬として不十分です。
 改修設計業務における現況調査の重要性に鑑み、設計業務とは独立して現況調査を発注する、または、現況調査と設計業務をセットで発注していただきますよう要望いたします。

 東京都では、建築物の建て替え寿命を65年としており、高度経済成長期に建築された多くの建築物について老朽化に伴い改修を行うケースが増えてきています。
 とりわけ、建築設備は建築に比べ改修の期間が短く、また施設の使われ方など改修後の使用条件によっても改修期間が変化することが多数見受けられます。
 そのため、改修設計においては、改修の条件と目的を明確に設定した上で、現況調査と設計業務を行うことが重要となります。
 現状においては、現況調査が発注されずに設計業務のみが発注されるケースが多くを占めます。この場合、設計業務の前段階である現況調査が十分に実施されない状態で、設計業務が発注されるケースが多々見受けられます。このため、設計業務を受注しても、再度の現況調査や設計条件のヒヤリングなど追加の業務が発生することとなり、設計業務の業務報酬のみでは十分に賄えないことになります。
 つきましては、改修設計業務において、設計業務とは独立して現況調査を発注する、または、現況調査と設計業務をセットで発注していただきますよう要望いたします。