思い出のスケッチ #360
ウルネス教会
石井 孝男(東京都建築士事務所協会賛助会員、三協株式会社)
 10年程前に家族と北欧旅行した折に、「スケッチ」ではなく帰国してから旅行記念として写真や絵葉書から絵を描きました。絵は、ノルウェーのベルゲンから観光バスでフィヨルド見学後、スエーデンのオスロに向かう途中に見た文化遺跡[ウルネス(スターヴ)教会]です。
 各種の書物・文献等によりますと1979\年にユネスコの世界遺産に登録されています。
 建築されたのは1130年前後と推測され、ウルネスの教会建築はキリスト教建築とヴァイキング建築が結びついた「ウルネス様式」と呼ばれています。
 この教会は釘やネジは使われていません。キリスト教の特徴である十字架は少なく、屋根にはドラゴンの頭を模った飾りがあり、ドラゴンの鱗を模した板で覆われています。ヴァイキングは船の船主や船尾に魔除けとして龍頭を付けていました。同じ意味があるのです。
 木造の教会に使われている木はマツで、外壁や屋根の表面には腐食や虫がつくのを防ぐため、松脂(タール)を塗っているため、この教会の色は黒なのです。
ウルネス教会の初期の建築物は基礎に石を使用せずに直接地面に差し込んで建てたため、長持ちしませんでした。また、宗教革命でプロテスタントにより焼き払われたり、戦争の影響もあり、現在はわずかに28棟しか残っていません。
石井 孝男(いしい・たかお)
東京都建築士事務所協会賛助会員、三協株式会社
1967年 東京都立大学大学院工学研究科土木工学専攻修了/日本道路公団(現NEXCO中日本)入社、本社・建設局・管理局及び試験研究所等で東海大橋・東名阪自動車道(木曾三川)橋・若戸大橋拡幅・東名改築等に携わり、所長・調査役等を勤める/1993年日本道路公団退職、石川島播磨重工業(IHI)入社/1994年東京都立大学博士(工学)の学位を授与/1995年武蔵工業大学(現東京都市大学)非常勤講師/1996年カザフスタン(イルテイシュ橋梁)に携わり部長・技師長を勤める/2006年石川島播磨重工業退社、NEXCO中日本関連会社入社/2009年退社、同年三協(株)技術顧問、現在に至る