はじめに
東京消防庁(以下「当庁」)では、防火に関する専門家の立場から、事業主や設計者等が参考にできるものとして、また、法律を補完するものとして、建築物の防火性能向上のために「予防事務審査・検査基準」(以下「審検」)を定めています。しかし、昨今の防火対象物の用途の多様化、大規模化、複雑化並びに消防関係法令の複雑化に伴い、現行の基準では、判断が困難な場合や不合理が生じる場合がありました。
こうした状況を踏まえ、消防用設備等の設置のあり方について当庁内で検討を重ね、職員が判断しやすく、事業主等にも理解が得られる、簡潔かつ合理的な基準に改定しました(図❶)。今回は改定された審検のうち、消防用設備等を設置する範囲の明確化に関する部分を紹介します。
消防用設備等を設置する範囲の明確化
消防関係法令では、消防用設備等の設置が必要となる防火対象物の範囲が不明確であり、各消防署によってその範囲の判断が異なるという課題がありました。そのため、法令上消防用設備等の設置を要しない部分の明確化、また、消防用設備等の設置を要する部分であっても、その部分の特性に応じて、特例の対象となる消防用設備等を示しました。(特例については次回掲載予定です。)
(1)消防用設備等の設置を要しない部分
次の部分は、消防用設備等の設置を要しない部分として取り扱います。①屋上等(図❷)
最上部以外のセットバックした部分を含む屋上、人工地盤、スロープ等で、上部が屋根、庇等により覆われていない部分。
②デッドスペース・地下ピット等(図❸)
デッドスペース、地下ピット等で、次のすべてに該当する部分。
ア 建築設備等(次に掲げるものを除く)が設置されていない部分であること。
・配線および配管
・最下層の免震装置(付属する設備を含む)
・給水タンクまたは貯水タンク
・照明設備
イ 点検口(高さおよび幅がそれぞれ概ね1,200mm以下および750mm以下)でのみ出入りが可能である等、みだりに人が立ち入ることができない措置を講じている部分であること。
ウ 建築基準法令上、床面積に算入されていない部分であること。
これらの部分は、屋外であることや、通常人が出入りせず、物品等が存置されないことから、消防用設備等の設置を要しないものとしました。ただし、防火対象物内にある電気設備や危険物等の収容物や駐車の用に供する部分、道路の用に供する部分等、その部分の危険性に応じて必要となる消防用設備等の規定を「特段の規定」(図❹)とし、この特段の規定に基づき必要となる消防用設備等は、屋上等であっても必要となります。
(2)外部の気流が流通する場所の範囲の拡大
スプリンクラーヘッドや自動火災報知設備の感知器の設置を要しない部分として、消防法施行規則では「外部の気流が流通する場所」が定められています。当庁では、当該場所の取り扱いを審検等に定めています。従前の基準では、外気に開放された部分から一律に5mの範囲までしか取り扱うことができませんでしたが、今回の改定により概ね開口部の高さ分の距離の範囲まで「外部の気流が流通する場所」として取り扱うことができるようになりました(図❺~❼、表①)。
次回は、引き続き消防用設備等の設置する範囲の明確化から、消防用設備等の特例基準について掲載する予定です。
改定に関する解説資料はこちらからご覧いただけます。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jimukensa/index.html