思い出のスケッチ #356
佃島と“タワマン”
大島 健二(東京都建築士事務所協会台東支部、OCM一級建築士事務所)
 江戸時代、大阪の佃村の漁民が幕府より貰い受けた小さな干潟が起源の佃島。船着き場と住吉神社を中心にした古いまちなみと、背景のタワーマンション「大川端リバーシティ21」の新旧対比こそが、東京の風景の醍醐味ともいえる。
 雑司ヶ谷の霊園に続く風景として墓標のように見える池袋サンシャインビル、旧芝離宮公園を取り囲み睥睨するかのような高層ビル群、墨田区向島の下町からちらちらみえる東京スカイツリー、西新宿十二社熊野神社と超高層ビル群などなど……。
 建築学会賞をもらったビルでも、構造設備的、経済的な理由で4〜50年で壊されてしまうような日本の建築が置かれている状況の中で、「古いまちなみ」を保存するには、防災面・経済面など解決しなければならない問題を多く抱えている。
 しかしそれだけでなく、これからのデジタル社会を生きる人間にとって、目に見える「生の記憶」がどれだけ価値のあるものかということを、もっと真剣に議論していいのではないだろうか。
大島 健二(おおしま・けんじ)
東京都建築士事務所協会台東支部、OCM一級建築士事務所
1965年 神戸生まれ/1991年 神戸大学大学院建築学科修了 西洋近代建築史専攻/1991-94年 日建設計勤務 超高層ビル、官公庁、研究所など担当/1995年 独立/1997年~ バンタンデザイン研究所講師/2000年 OCM一級建築士事務所設立