こどもワークショップ開催──未来の建築士たちへ
青年部会|令和5(2023)年1月28・29日@エコギャラリー新宿(新宿中央公園内)
宮﨑 勲(東京都建築士事務所協会青年部会副部会長、北支部、株式会社宮﨑建築工房一級建築士事務所)
子どもたちといっしょに組み立て。
ぶら下がって強度を体感。
橋の上で記念撮影。
ダヴィンチ橋全景。
手づくりキューブパズル。
キューブパズルをつくる。
撮影:青年部会
子どもたちへものづくりの楽しさを伝えるために
 子どもたちに、ものづくりの楽しさを伝えたい。数年前より青年部会ではこの思いを抱きつづけていた。
学校への出張授業等いろいろ検討をしていたが、新型コロナウイルスの蔓延により開催が難しくなっていった。
 少しずつ制限が緩和され始めた令和4年度。何とか子どもたちにものづくりの楽しさを伝えたいと、4月より「何を」、「どこで」、「誰を対象に」開催するかを協議、検討を重ねてきた。結果、今回ようやく「こどもワークショップ」として、2×4材を用いたダヴィンチ橋の組立体験の開催に漕ぎ着けることができた。
 開催するにあたり、このダヴィンチ橋を組み立てるという企画にどの程度子どもが興味を持つか、そして楽しむことができるかを測るため、試験的に「建築ふれあいフェア」のけんちくワンダーランドの企画として子どもたちに体験してもらった。結果として上々の感触を得ることができた。
 この時点で誰を対象に何をするかは決まった。
会場選定と集客
 次の大きな課題はどこで開催し、一般の子どもたちをどのように集客するかである。最終的に会場に選定したのは新宿中央公園内にある「エコギャラリー新宿」。
 選定理由は、
1. 新宿西口広場でダヴィンチ橋を試験的に行ったことから、新宿区が最もこのダヴィンチ橋という企画の周知されているのでないかということ。
2. エコギャラリー新宿が公園内にあり遊びに来ている家族を引き込める可能性があること。
3. エコギャラリー新宿での催し物を開催するフロアがふたつのイベントを同時に開催できる形状となっており、他の企画に参加した人が立ち寄る可能性があること。
4. 公共施設であるため一般の人が立ち寄りやすく、かつ安価で借りることが可能なこと。
 結果として公共施設を選択したことが、いちばんの課題であった集客をどのように行うかという問題の解決に繋がっていった。
一般市民への周知、新宿区の後援
 会場の予約にあたり今までお世話になり面識のあった新宿支部長へ報告と相談をしたところ、建築ふれあいフェアにおいて新宿区から参加されていた都市計画部の方を紹介していただいた。現在すすめている企画、選定している会場に関して相談したところ、新宿区の後援がもらえる可能性があること、後援がもらえれば新宿区の広報へ掲載できる可能性があることをアドバイスとしていただいた。
 すぐに青年部会幹事会にて協議を行い、承認を受け新宿区へ嘆願することにした。実際にはこの企画が青年部会だけの企画でなく東京都建築士事務所協会としての企画となるため、新宿区との交渉はすべて事務局を通して行うこととなった。先だってアドバイスをいただいた新宿区都市計画部の方へ事務局とともに事前に挨拶へ伺いたかったが、時間を合わせられず礼を欠いたことが悔いとして残っている。新宿区都市計画部の方には企画実現のために、新宿区後援の実現、広報への掲載、各公共施設へのポスターの掲示等、多大なお力添えをいただいた。言葉では言い表せないぐらいの感謝の気持ちでいっぱいである。
予想を上回る大盛況
 今回のイベントは1月28日、29日の2日間開催とした。1回の組み立てから解体そしてパズルつくりまでを50分とし、1日で5回の開催とした。今回イベントはコロナ禍での開催ということから部屋の中の人数に通常の半分という制限があり、原則予約制とした。
 当初は、「予約はさほど入らないだろう」、「当日公園で呼び込みでもするか」と話していた。しかし実際にはなんと満員で、予約を断わる回も発生したほどだった。最終的に当日10名以上のキャンセルが出たものの、保護者含め77名もの参加をいただいた。この集客は、建築関係でない一般市民が対象だったことを考えると、すごいことではないだろうか。
子どもといっしょにダヴィンチ橋の組み立てを体験
 今回の企画は、2×4材を用いてダヴィンチ橋と呼ばれる橋を子どもたちと力を合わせて組み立てるというものである。このダヴィンチ橋は釘も接着剤も使うことなく、かなりの耐荷重を得られる橋である。そのため、容易にその場で組み立てと解体を体験することが可能である。子どもたちには力を合わせて組み立てながら、低い高さの時には橋の上で跳ねたりと、木のしなりからくるトランポリンのような弾性を肌で感じることができたはずである。組み上げていくにつれて段々と迫力のあるサイズとなり、子どもたちのテンションもどんどん上がっていく。橋が完成した後には、ぶら下がることにより耐荷重の強さを感じたり、精度よく組み立てられた橋の上に乗ったりと、ビクビクと警戒しながらも目をキラキラさせている子どもたちがそこにいた。自分たちでつくり上げたということ、そしてその強さを体感できたということが心をワクワクさせ、今まで体験したことのなかった新しい世界を見ることができたのではないかと思う。
 子どもたちには身体を使ってダヴィンチ橋を組み立てた後に、今度は細かい手作業のキューブパズルづくり、さらには自身でつくった手づくりパズルに挑戦してもらった。こちらも好評。家族でワイワイ盛り上がりながらつくり上げていき、無心で自分でつくったパズルに挑んでは返り討ちにあっていた。この暖かい光景が見られただけで開催してよかったと心底思った。
 また答えていただいたアンケートの中に、将来建築士になりたい、という子どもがいたこともわれわれを笑顔にさせた。
課題となっていた社会貢献活動の実現
 以前より青年部会として課題となっていた社会貢献活動の実現。今回、未来の建築士へ、ものづくりの楽しさを伝えるという形で踏み出み出した新たなる一歩。今後、未来の建築士たちに何を伝えて行けるか。決して同じことをする必要もなく、その時にあったことをしていければよいと思う。次世代の青年世代の進化が今後とても楽しみである。
 最後にこの企画を実現させるために多大なるご尽力をいただいた皆さま、特に引地さんをはじめ事務局の皆さんのお力添えなくして無事終えることはできなかったと思う。本当に感謝の気持ちでいっぱいである。
 最後に、数年にわたり抱えてきた社会貢献活動の実現に対する肩の荷が降り、安堵した自分がここにいることを付け加えておく。
宮﨑 勲(みやざき・いさお)
東京都建築士事務所協会青年部会副部会長、北支部、株式会社宮﨑建築工房一級建築士事務所代表取締役
1973年 東京生まれ/1995年 日本大学生産工学部建築工学科卒業/いくつかの設計事務所を経て、2007年 株式会社宮﨑建築工房一級建築士事務所設立、現在に至る