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鈴木 文雄(東京都建築士事務所協会研修委員会委員長・理事・墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所)
去る9月30日に日事連主催の「第44回建築士事務所全国大会(熊本大会)」が開催されました。好天に恵まれた夏日が連続したこともあり、久しぶりの行楽を満喫された方は多いと思います。熊本といえば町のシンボルである熊本城天守の復旧したお姿を見ないわけにはいきません。被災後と復旧途中の痛々しい姿を見てきていただけに、復旧の済んだ大天守と小天守が秋空にそびえる姿は感慨深いものがありました。城全体としてはまだまだ復旧途中ですが、シンボルの復活は地元のみなさんにとっては大きな励みになるはず。天守という存在の影響力は大きいのです。
熊本城の中で個人的に一番好きなのが宇土櫓です。昭和に復元されたRC造の大天守・小天守に目が行ってしまいますが、この宇土櫓は、加藤清正が築造したとされる3層、地下1階、地上5階建ての現存する木造建築物であり、国の重要文化財に指定されています。西南戦争でも焼けず、熊本地震でも倒壊しなかった創建当時の勇姿は健在でした。とはいえ、全体にねじれや変形が生じているらしく、解体修復が予定されているといいます。概ね100年ごとに修復されてきたようで、昭和2(1927)年に行われた解体修復で基礎をコンクリート製にし、鋼材の筋交いを柱に設置したことが倒壊を防いだとされています。そろそろ100年が経ついい機会なので、ゆっくり治療を受け、変わらぬ威厳のある佇まいを後世に残してもらいたいものですね。城内の完全復旧は2037年とのことなので、今後も訪れ経過を見届けたいと思います。
鈴木 文雄(すずき・ふみお)
東京都建築士事務所協会理事、研修委員会委員長、会誌専門委員会委員長、墨田支部、有限会社鈴木設計一級建築士事務所
1984年 東海大学建築学科入学/1987年 同校中退、東京デザイナー学院建築デザイン科入学/1989年 同校卒業/有限会社鈴木設計一級建築士事務所入社、現在に至る
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