公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会(以下「当会」)では、文化庁より認定を受けた「檜皮・杮葺」、「茅葺」、「檜皮採取」、「屋根板製作」の4部門の選定保存技術があり、国庫補助を受けながら、それぞれの技術の養成研修に取り組んでいます。
ここでは、その成果についてお伝えしたいと思います。
この研修は2年を1期とし、実習では、材料整形、葺き、檜皮・杮葺きに欠かすことのできない竹釘製作などを行います。座学では、日本建築史や実測および製図など、年代ごとの建造物の特徴などを学び、それぞれの文化財建造物の保存継承ができるよう職人の育成に取り組んでいます。
この屋根葺士養成研修事業は、40年以上にわたり途切れることなく続いています。それには、行政関係者や専門家の諸先生方のお力添えがあり、研修開始当時のベテラン職人による技術の継承が順調に進んだように思います。また、研修を受けた者が、今や50~60代のベテラン職人となり、自らも研修の指導員として携わっていることこそがその成果といえるのではないでしょうか。
また、文化財修理現場では研修を受けた者が中心となり、共同現場などで事業所の枠にとらわれることなく若手の指導に当たり、文化財建造物の保存と継承に意義を感じ仕事に取り組んでいます。
現存する葺士の平均年齢は40歳で充実してきたと思いますが、今後も後継者の育成は欠かすことのできない課題と考えています。
研修のフィールドとして、平成12(2000)年に「世界文化遺産貢献の森設置に関する有誠者会議」が設置され、平成13(2001)年からは、「ふるさと文化財の森構想事業」も開始されたことにより、ふるさと文化財の森設定林や全国の国有林約400haなどへの入林が可能となり、また同年より、国庫補助事業としての研修が始まり、長期的な研修が可能となりました。
研修生には、初期研修に続いて、中級研修にも参加してもらい、将来的には、指導者となる高い意識と技術を持った職人を育てられるよう、また材料不足にならず安定的に檜皮材料の提供ができるように研修事業に取り組んでいます。
茅葺屋根は地方性があり、葺き方や材料に大きな違いがあるため、当会では、茅葺師連絡協議会とも連携し、地方での経験ある中級者を対象に技術研修を行ってきました。また各地の茅葺技術の共有を図るため、研修現場での見学会とフォーラムを開催し、全国の茅葺師とともに技術の保存継承にも取り組んできました。
また、平成24(2012)年からは初級研修を開始し、座学では、日本建築史や、工程管理、積算などの講義も行い、技術だけではなく知識や意識の高い職人の育成に取り組んでいます。
始まって間もない研修ですが、今後継続することにより、屋根板製作を主とする技術者も育ってくるのではと期待しています。
今回、ユネスコ無形文化遺産登録を契機に、私たちの植物性資材を用いた屋根技術が日本の誇れる伝統技術として世界で評価していただけるように、今後も技術者の養成研修に取り組み、世代が途切れることなく、職人が育ち、伝統文化の継承と普及啓発に取り組んでいきたいと思っています。
ここでは、その成果についてお伝えしたいと思います。
文化財屋根葺士養成研修事業
檜皮・杮葺き職人の高齢化と減少により文化財建造物の保存継承が危惧されていたことから、昭和49(1974)年より当会での研修が開始されました。この研修は2年を1期とし、実習では、材料整形、葺き、檜皮・杮葺きに欠かすことのできない竹釘製作などを行います。座学では、日本建築史や実測および製図など、年代ごとの建造物の特徴などを学び、それぞれの文化財建造物の保存継承ができるよう職人の育成に取り組んでいます。
この屋根葺士養成研修事業は、40年以上にわたり途切れることなく続いています。それには、行政関係者や専門家の諸先生方のお力添えがあり、研修開始当時のベテラン職人による技術の継承が順調に進んだように思います。また、研修を受けた者が、今や50~60代のベテラン職人となり、自らも研修の指導員として携わっていることこそがその成果といえるのではないでしょうか。
また、文化財修理現場では研修を受けた者が中心となり、共同現場などで事業所の枠にとらわれることなく若手の指導に当たり、文化財建造物の保存と継承に意義を感じ仕事に取り組んでいます。
現存する葺士の平均年齢は40歳で充実してきたと思いますが、今後も後継者の育成は欠かすことのできない課題と考えています。
檜皮採取(原皮師)養成研修事業
平成11(1999)年より始まった事業ですが、当会では原皮師の登録が4名までに減少し、檜皮葺建造物の保存継承が危機的な状況になりつつありました。このままでは、上質な檜皮を文化財修理に安定的に提供し続けることが困難になると考え、当会では、それまでの原皮師と屋根葺士の分業体制を見直し、屋根葺施工をする会員が自ら原皮師の育成を始めました。研修のフィールドとして、平成12(2000)年に「世界文化遺産貢献の森設置に関する有誠者会議」が設置され、平成13(2001)年からは、「ふるさと文化財の森構想事業」も開始されたことにより、ふるさと文化財の森設定林や全国の国有林約400haなどへの入林が可能となり、また同年より、国庫補助事業としての研修が始まり、長期的な研修が可能となりました。
研修生には、初期研修に続いて、中級研修にも参加してもらい、将来的には、指導者となる高い意識と技術を持った職人を育てられるよう、また材料不足にならず安定的に檜皮材料の提供ができるように研修事業に取り組んでいます。
茅葺士養成研修事業
平成16(2004)年、当会では茅葺士全国研修大会を開催し、茅葺師の高齢化や後継者不足と茅材料の入手難などの問題に取り組んで行くことになりました。茅葺屋根は地方性があり、葺き方や材料に大きな違いがあるため、当会では、茅葺師連絡協議会とも連携し、地方での経験ある中級者を対象に技術研修を行ってきました。また各地の茅葺技術の共有を図るため、研修現場での見学会とフォーラムを開催し、全国の茅葺師とともに技術の保存継承にも取り組んできました。
また、平成24(2012)年からは初級研修を開始し、座学では、日本建築史や、工程管理、積算などの講義も行い、技術だけではなく知識や意識の高い職人の育成に取り組んでいます。
屋根板製作者養成研修事業
平成30(2018)年に屋根板製作の技術が選定保存技術の団体認定を受けたことにより、以前から屋根葺士養成研修事業の中に組み込まれていたカリキュラムが、新たに国庫補助事業にて96時間の研修を毎年行えるようになりました。実習時間としては少し短いのですが、選定保存者などから指導が受けられ、杮葺の施工現場でしか杮材に触れない職人らが、原木の見分け方、材の取り方、木取方法の基本などを学ぶことにより、建造物に適切に資材を施工できるのではと思っています。始まって間もない研修ですが、今後継続することにより、屋根板製作を主とする技術者も育ってくるのではと期待しています。
おわりに
それぞれの養成研修により、歴史や現存の状況は異なりますが、職人の年齢構成はバランスがよく、今後の伝統技術の保存継承には問題が少なくなってきたと思います。これは、会員や事業所、個人の問題と考えるのではなく、当会全体の問題として、閉鎖的だった職人技術の伝承をオープンにし、若手の育成に取り組んできたことの成果といえるのではないでしょうか。今回、ユネスコ無形文化遺産登録を契機に、私たちの植物性資材を用いた屋根技術が日本の誇れる伝統技術として世界で評価していただけるように、今後も技術者の養成研修に取り組み、世代が途切れることなく、職人が育ち、伝統文化の継承と普及啓発に取り組んでいきたいと思っています。
大野 浩二(おおの・こうじ)
公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会会長
1965年 兵庫県丹波市生まれ/1979年 社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会設立/2010年4月 公益社団法人に移行/2012年 公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会理事
1965年 兵庫県丹波市生まれ/1979年 社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会設立/2010年4月 公益社団法人に移行/2012年 公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会理事