支部リレー東京まち歩きMAP④:豊島支部
大塚駅南エリアMAP
加藤 恭子(松本エンジニアリング株式会社)
谷川 淳一(谷川淳一一級建築士事務所)
井出 幸子(株式会社井出幸子建築設計室)
 大塚駅から始まるこのエリアは、独特なスケール感とともに、なんとも懐かしさを覚える賑わいが魅力です。
 かつて、玉川上水を水源とする千川上水から分岐した谷端川は、昭和38(1964)年に暗渠化されるまで、長崎、板橋、滝野川を境に大きく曲がりながら豊島区を流れ、大塚駅を横切り、大塚花街(大塚三業通り)の灯を川面に映しながら、小石川植物園・後楽園経由で神田川に合流していました※1。
 大塚駅の南北の現在の地名は駅名に由来する北大塚、南大塚ですが、元の地名は巣鴨でした。池袋も含めた広い範囲が巣鴨村だったのです。大塚駅近辺のそこかしこに巣鴨の名称が残っていて、MAPにもある「日本基督教団巣鴨教会」も、かつての巣鴨宮下(現在は南大塚一丁目)にあります。
 現在の目白駅から田端駅を結ぶ路線が計画された際、大塚駅は丸ノ内線新大塚駅の辺り(かつての大塚辻町、現在の文京区大塚四丁目)に設定されましたが、諸条件を満たさず、明治36(1903)年に当初の計画より北寄りの現在の位置に新設されました。これが大塚駅(豊島区)が本来の大塚(文京区)と離れてしまった理由のようです。
 また、沿線の神社仏閣詣でで賑わう都電荒川線(三ノ輪橋から早稲田を結ぶ路面電車)は、明治44(1911)年に飛鳥山から大塚駅間で開業した王子電気軌道(王子電車)に始まるもので、今も「東京さくらトラム」の愛称で親しまれています※2。
 今回おすすめのまち歩きは、大塚駅北口から大塚三業通りを南下し、ぐるっと巡って大塚駅に戻るルートです。大塚という地名を辿りながらも、途中から文京区の行政エリアに入りますが、以上のことからご容赦ください。
 マップと、QRコードの関連サイトも参考に、途中の食事・土産のお勧めも確認しながら、まち歩きを楽しんでください。
※1 資料:『暗渠となってその姿を消した、豊島区内最長の川 旧谷端川の橋の跡を探る』豊島区立郷土資料館友の会、平成11(1999)年
※2 資料1:『わが街大塚・巣鴨、わが母校 仰高西』仰高西尋常小学校同窓会、平成12(2000)年
資料2:「大塚は巣鴨だった」南大塚六商店会
関連サイト:南大塚六商店会
https://mosmn.tokyo/index.php/2022/02/05/sugamo/
1. 大塚架道橋
 豊島区遺産、いや東京都遺産と推したがる人が多いという明治35(1902)年築の架道橋。鉄道の歴史から煉瓦はイギリス積みを継承している。
関連サイト:「山手線が渡る橋・くぐる橋」©高橋俊一
https://warpal.sakura.ne.jp/yamanote/14ohtsuka/3ohtuka/otuka.htm
2. 大塚三業通り
 谷端川沿いに川なりに曲がった道沿いに繁栄した。料亭の前栽の名残か軒先園芸が続く。古に想いを馳せて想像たくましく、痕跡を探してみてもいかがだろう。
関連サイト:「歴史探偵」©キャンディ・ケン
https://www.rekishitantei.com/entry/2019/02/09/大塚は”芸妓さん”の街だった~大塚駅南口・三
3. 東福寺
 真言宗豊山派の寺院。山門脇に十羅刹女(じゅうらせつにょ)の小さな祠がある。元々は大塚天祖神社にあったが、神仏分離で東福寺に移った。十羅刹女は、仏教の天部における10人の女性の鬼神。鬼子母神とともに法華経を守護する諸天善神である。区の建築無料相談会後、既存ブロック塀をフェンスに改修(豊島区既設塀等改善工事補助事業)
4. 「greendipity(Overlap House)」
 前栽がスパイラルに立ち上がる集合住宅。外観は2度見がお勧め。
設計:平田晃久
関連サイト:TOTO通信 2022年新春号
https://jp.toto.com/tototsushin/2022_newyear/case02.htm
5. 「Treform(トレフォルム)」
 3人の建築家(千葉学、小川晋一、西沢立衛)によるコラボレーション集合住宅。
関連サイト:タカギプランニングオフィス
https://www.t-p-o.com/rentproperty/217/
6. 「oggi(オッジ)」
 日本以外にも活躍の場を広げる建築家山口誠氏による初の低層RC集合住宅は、閑静な住宅街にある。
関連サイト:japan-architects ブログ
http://world-architects.blogspot.com/2013/12/makoto-yamaguchi-oggi.html
7. 「大空と大地のなーさりぃ 茗荷谷園」
 幹線道路から見える連続三角屋根のシルエットが目印。2019年度 キッズデザイン賞を受賞。
設計:キノアーキテクツ
関連サイト:キノアーキテクツ
https://www.kinoarchitects.com/works/42_ozoratodaichi_myogadani/
8. 文京区立大塚公園
 昭和3(1928)年に開園した欧米風都市公園の先駆け。1929年にラジオ体操活動開始。
 平成元(1989)年に改修復原工事が行われ、往時の露壇を見ることができる。
画像出典と資料:『庭園と風景』第10巻第4号、日本庭園協会刊、1928年
http://coretokyoweb.jp/service/file/item/teien_to_fukei_1928-5.pdf
9. 「川本製作所東京ビル」
 決して大きなオフィスビルではないが、目を引く印象的なファサード。平成20年度日本建築士会連合会賞優秀賞、第3回サステナブル建築賞(事務所ビル部門)。設計:日建設計
関連サイト:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構
https://www.ibec.or.jp/sustainable/building/3th/05.html
10. 鈴木信太郎記念館
 仏文学研究者の鈴木信太郎の旧居宅。昭和3(1928)年に建築されたRC造の書斎棟。戦後、罹災を免れた書斎棟、茶の間・ホール棟、座敷棟の3棟構成となった。子息の鈴木成文(1927-2010、建築計画)研究室による罹災前の建物の模型・図面が展示されている。
関連サイト:豊島区公式ホームページ
https://www.city.toshima.lg.jp/129/bunka/bunka/shiryokan/suzuki/suzukioverview.html
11. 大塚天祖神社
 巣鴨の総鎮守。東福寺に移された十羅刹女は、信心の熱い人たちが必ず詣でていたそうだ。雌雄の大銀杏が御神木。
12. 千成もなか
 80年以上愛され続ける大塚スイーツ。
 千成最中は豊臣秀吉の馬印の瓢箪がモチーフ。
加藤 恭子(かとう・きょうこ)
東京都建築士事務所協会豊島支部副支部長、支部編集委員
1968年 埼玉県生まれ/2005年 松本エンジニアリング株式会社入社、プラント建屋内構造物設計に従事
谷川 淳一(たにがわ・じゅんいち)
東京都建築士事務所教会豊島支部副支部長、谷川淳一一級建築士事務所主宰
1954年 東京都生まれ/1978年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業/1988年 熊井竹夫建築設計事務所/2014年 現事務所開設
井出 幸子(いで・さちこ)
東京都建築士事務所協会豊島支部副支部長、UIFA JAPON広報担当理事、(株)井出幸子建築設計室一級建築士事務所主宰
1950年 東京都生まれ/1972年 日本女子大学住居学科卒//1972〜2012年 (株)アール・アイ・エー/2012年 現事務所設立
カテゴリー:支部 / ブロック情報
タグ:まち歩き