社労士豆知識 第53回
70歳まで定年延長? 同一労働同一賃金ってなに?
山本 浩二(山本労務管理事務所所長)
定年は70歳に延長しなければならないの?
2021年4月1日から改正高齢者雇用安定法が施行されます。今回の改正では70歳までの定年延長ではなく「70歳までの就業機会の確保」となっています。

改正前:65歳までの雇用確保(義務)

改正後:70歳までの就業確保(努力義務)

また、現在は65歳までの雇用確保が義務であるのに対して、今回の改正では70歳までの就業機会確保は努力義務となっているため、原則として罰則はありません。
ただし、行政指導の対象になることがありますので、65歳以降の就業機会確保に向けた検討は必要と考えます。
70歳までの就業機会確保の検討事項
具体的な就業機会の確保方法は下記の4つです。
①定年制廃止
②70歳までの定年引上げ
③70歳までの継続雇用制度の導入
④継続的な「業務委託契約」や事業主が出資する「社会貢献事業」制度の導入
ただし④については原則労働者代表の同意が必要です。
中小企業ではどのような取り組みが多いか
中小企業においては、①定年の廃止と②70歳までの一律の定年延長は、退職金の問題や再雇用後の賃金改定に混乱を招く可能性があるため、③継続雇用制度が多く採用されると思われます。
企業ごとにメリットやデメリットを確認して、70歳までの就業機会の確保について検討しましょう。
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、職務内容や勤務形態、責任の程度が同等の労働者に対しては同一の賃金(待遇)を支払うべきという考え方です。同一の賃金とは基本給だけでなく、各種手当や賞与、退職金、休暇、福利厚生も含まれます。
働き方改革関連法案(同一労働同一賃金)の改正
大企業では2020年4月1日からすでに施行されている同一労働同一賃金ですが、2021年4月1日から中小企業でも施行されますので、中小零細企業においても法令を理解する必要があります。
同一労働同一賃金に注意が必要な企業とは
次の①、②両方にあてはまる企業は特に注意が必要となります。
①正社員以外に、契約社員やアルバイトなど給与形態(手当や賞与、退職金等)の違う労働者がいる企業
②下記ア~ウのいずれについて正社員と差が少ない場合
ア「業務(職務)内容」
イ「業務に伴う責任の程度」
ウ「配置変更の範囲」
どのような対策が必要か
前項で注意すべき企業に該当した場合は、下記の検討が必要になります。
①前項に示したア~ウの違いを、正社員とその他の労働者で明確に区分すること。
②正社員との待遇差について説明できない労働者がいる場合については、その待遇差を埋めるべく手当の改定や休暇の変更について検討をすること。

今までは、パートや契約社員の場合、個別に契約をしていれば、正社員と待遇に差があったとしても問題になることはありませんでしたが、これからは同一労働同一賃金について違反しないか確認が必要です。
また、定年後再雇用後の待遇についても、同様の勤務状況で賃金のみ下げるということについて、一定の基準以下になると違反となる場合がありますので、検討が必要です。不明な点がありましたら、専門家である社労士に相談されることをお勧めします。
山本 浩二(やまもと・こうじ)
特定社会保険労務士、社会保険労務士法人 山本労務管理事務所 所長
法人会等各種セミナー講師を始め、労使紛争問題(残業問題、解雇トラブル等)や労働組合対策を得意分野として多数の企業の顧問を務める。
カテゴリー:建築法規 / 行政
タグ:社労士