思い出のスケッチ #337
東京パノラマ(日建設計イラストレーションスタジオ)
山田 雅明(東京都建築士事務所協会千代田支部/株式会社日建設計)
幅16mの壁画全体。
左側の部分。
 去年、会長の亀井から、われわれイラストレーションスタジオに、「日建設計の職場環境をアート溢れる楽しい空間にしてください」、という大雑把であるが何やら楽しげなタスクが与えられた。
 何度かのブレスト、CGによるシミュレーション、議論等重ね、さまざまなアート計画を立ち上げた。その中のひとつ、一階の白い壁、黒い床で構成されたエレベータホールの長い壁面に絵を描いたら、エレベータを待つ時間も退屈しないだろうと考えた。
 イラストの構図は、東京スカイツリーから都心を撮った写真を繋いだ大パノラマと決定。早速実行に移した。だが、長さが一六メートルもある壁は、相当緻密にディテールを描き込まなければ間が持たない。これはたいへんなことになったと実は内心後悔もしたが、スタジオの部員一〇人を総動員し、A3×二〇枚を、業務の合間に半年間かけてコツコツと描き上げた。
 やっと完成したね~、終わったね~、とみんなでホっと一息ついていたのも束の間、繋ぎ合わせてみたら、描き手によって個性があるので、絵にかなりバラつきがあることが判明。調整するのも手作業で、調整後再度繋ぎ合わせて、今度こそ完成と思いきや、今度はスカイツリーが描かれてないと誰かが言い出した。だってスカイツリーからの景色なので、入ってないのは当たり前などと思いつつ、意見を取り入れ別描きしたスカイツリーを合成、ついに完成した。
 業務合間の作業とはいえ、なんと八カ月が経っていた。根気と情熱がいる作業だったが、今はみんなの協力、協働でひとつの目標をなし遂げたという達成感があり、とてもいい思い出となっている。
山田 雅明(やまだ・まさあき)
日建設計、アメリカ建築イラストレーターズ協会アジア地区代表及び顧問委員
1982年 名古屋芸術大学絵画科卒業/同年カリフォルニア大学アーバイン校留学、HOKロスアンジェルス等で建築イラストレーターとして勤務/1993年 帰国、日建設計 入社/多種多様なプロジェクトに参画、多国籍メンバー12名が所属するイラストレーションスタジオで設立から2020年まで室長兼アートディレクター/2011年American Society of Architectural Illustrators(アメリカ建築イラストレーターズ協会)会長に就任、東京でカンファレンス、エキジビション等を開催/現在同協会アジア地区代表及び顧問委員/エキジビションプロデューサーとして、UIA2011東京大会(第24回世界建築会議)のプログラム「国際建築イラストレーション展」を主宰、世界各国の建築イラストレーション200点余りをポーラミュージアム銀座にて展示/2018年 日建設計イラストレーションスタジオ展「Drawn to Architecture」主催、東京、大阪(生きた建築ミュージアムフェスティバル)、九州、ボストン、プロビデンス等でエキジビション開催