しんえいこども園 もくもく
16アーキテクツ
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 一般一類部門|優秀賞
建築主:
社会福祉法人 新栄会
設計:
一級建築士事務所 株式会社16アーキテクツ
施工:
三井住友建設株式会社
所在地:
東京都新宿区
主要用途:
こども園、学童クラブ
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上4階
竣工:
2013年 2月
撮影:
16アーキテクツ
設計趣旨:
1958年に開校し、2011年に廃校となった新宿区立西戸山第二中学校を、認定こども園と学童クラブへコンバージョンしました。地域に根差した中学校の校舎を子どもたちの施設として再生させることで、地域の子育て支援に貢献することを目的としています。
用途変更により、スプリンクラーの新設等が義務付けられたため、木をふんだんに使った園が可能となりました。木(もく)空間での保育は、自然に対する優しい心を育み、コミュニケーション力を育みます。自然に木と触れ合う環境を提供し、できるだけ多くの樹種の木を多用な仕上げで使うことで、木の手触り、香り、ぬくもりを日々体感でき、新しい発見を繰り返すことを意図しました。
コンバージョンであるがゆえに、子どもたちは上下階の移動が日常となるため、階段室を楕円の木壁面の広場として計画し、単なる通路空間としてではなく、各ゾーンを繋ぐあそび場にもなる広場としての機能を持たせました。
(小川 達也、松田 光司)
小川 達也(おがわ・たつや)
1972年 広島県生まれ/1998年 九州大学大学院修了/1998〜2005年 栗生総合計画事務所/2005年 SolC建築設計事務所設立/2006年 16アーキテクツ設立、現在に至る
松田 光司(まつだ・みつじ)
1956年 宮崎県生まれ/1980年 広島大学工学部建築学科卒業/1986〜95年 GETT/1995〜2009年 ミクプランニング/2010年〜 16アーキテクツ プロデューサー
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
この施設は、高田馬場駅に程近い閑静な住宅街に位置しており、2011年に廃校となった中学校校舎を、認定こども園と学童クラブ併設のコンバージョン計画で改修したものである。
既存建物はRC造4階建で、外観からは正面入口の壁面緑化と外壁色彩化、木製門扉のほか耐震補強ブレースが目に留まるものの、こども園の印象は薄い。改修では、構造躯体を変えず、面積増加のないことが計画条件とされた。また、屋内では廊下を軸に教室や階段、また補強壁が躯体のまま残された平面配置となっていた。
この困難な課題に対して設計者は、用途変更でのスプリンクラー設置を生かし、子どもたちの居心地のよい施設のために、木材と幾何学的な壁の構成で画期的な空間を生み出した。
建物全体に木製フローリング、湾曲した壁や、斜めに配置した間仕切り壁に天然木材33種類をふんだんに使うことで、温もりがあり親しみのある内部空間が実現されている。特に防火上の区画壁が要る廊下と上下移動空間の階段は、独立柱を鏡面の円柱にし、その周りを木材を張り込んだ楕円状の壁で囲むことで、上下一体の広いあそび場に生まれ変わっている。また保育室には、あたかも樹木の上の隠れ家的なツリーハウスがある。子どもたちの冒険心と遊び心を引き出す絶妙な計画であり、さまざまな仕掛けが随所にあり楽しい。
「しんえいこども園もくもく」は、木材をテーマにさまざまな木材を多用することで、建物全体の空間一体性を創出し、日々の驚きと発見や木の独特の手触りなど、子どもたちが自然との触れ合いを感じ取れる活気溢れる施設になっている。階で分けられた保育室と学童保育室は、成長と発達といった子どもたちを育む空間としても成功していて、今後、同様のコンバージョンに一石を投じる作品として高く評価された。
(福島 賢哉)
福島 賢哉(ふくしま・けんや)
一般社団法人東京都建築士事務所協会監事
1947年生まれ/1971年日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修了/1971〜90年株式会社 伊藤喜三郎建築研究所/1990年〜株式会社賢プランズ設計事務所代表取締役