WITH HARAJUKU
設計|竹中工務店、伊東豊雄建築設計事務所
第49回東京建築賞|一般部門二類 優秀賞
北西より俯瞰する。明治神宮の杜を市街地に拡張。
  • 北西より俯瞰する。明治神宮の杜を市街地に拡張。
  • 竹下通り側エントランス。*
  • 原宿駅側エントランス。*
  • 明治神宮の杜と対峙する木のファサード。
  • トップライトから光が降り注ぐパサージュ。
  • 配置・1階平面図
  • 東西断面図 建物を貫くパサージュが周辺街区をつなぐ。
建築主:
NTT都市開発株式会社
表彰建築士
事務所:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
共同設計者:
伊東豊雄建築設計事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都渋谷区神宮前1-14-30
主要用途:
店舗
構造:
S造
階数:
地上10階、地下3階
敷地面積:
4,618.30㎡
建築面積:
3,914.45㎡
延床面積:
25,922.72㎡
竣工:
2020年3月
撮影:
Nacása & Partners Inc.、*上田 宏
設計趣旨:
 店舗、レストラン、コワーキングスペース、多目的ホール、集合住宅が立体的に構成された複合施設である。建物中央を貫き、原宿駅前通りから竹下通りの側道に抜ける半外部の公共通路「パサージュ」からオープンテラスや路地的空間が、樹木の幹から枝葉のように立体的に展開して街に接続する。行き交う人びとの流れを結び、街全体への回遊性を飛躍的に高めることを意図した。
 敷地西側には創建100年を迎えた明治神宮の広大な杜が広がっている。計画地付近はかつて「源氏山」と呼ばれた小高い丘陵地であり、約10mの敷地高低差を活かして建物全体を大きな丘=源氏山の地形の再現ととらえた。明治神宮の生態系保全に配慮し、この地域在来の植種を選定して、市街地化の中で失われた東京特有の斜面緑地の再生を目指した。その結果、明治神宮とストリートの間に緑あふれる快適なたまり場が生まれ、多様な活動を受け入れる公共的空間となっている。
(伊藤 宏樹、宮島 照久)
伊藤 宏樹(いとう・ひろき)
竹中工務店東京本店設計部企画設計部門企画設計グループ長
1970年 東京都生まれ/1993年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1995年 同大学大学院修士課程修了後、竹中工務店入社
宮島 照久(みやじま・てるひさ)
竹中工務店東京本店設計部設計第6部門設計1グループ長
1969年 岐阜県生まれ/1993年 名古屋工業大学工学院研究科卒業後、竹中工務店入社/2004–06年 ハーバード大学大学院GSD / Master of Architecture II 修了
選考評:
 原宿駅前に再開発された延床面積約26,000㎡からなる、商業施設、多目的ホール、集合住宅などからなる複合施設。JR山手線を挟んで明治神宮の広大な杜と対峙している。
 計画地周辺が江戸時代には「源氏山」と呼ばれた地形であったことに遡り、また北東側には竹下通りへとつながる小スケールの遊歩空間に接することから、駅前の大きなボリュームから段々状にスケールを下げ、「丘」を彷彿とさせるデザインとしたことが奏功している。
 駅前側からは「パサージュ」入口となる大きな空洞を経て、ふんだんに緑化されたステップ状のテラスに至り、各所の滞留スペースに陣取って思い思いにくつろいだり、また店舗やレストランなどを巡りながら、敷地周辺の細街路に至るまで、変化に富んだ散策も楽しめるようになっており、都市の公共空間を豊かなものにしている。
 上層階の住居群は豊かな眺望に恵まれており、西側は明治神宮越しの夕陽を眺め、また東側は広く首都の中心部を見晴らすシティ・ビューを楽しむことができる。住戸のファサードではバルコニー部分の軒天や界壁を木製として、均整の取れた、それでいて柔らかみのある独特の外観を生み出していて、とても爽やかである。
(古谷 誠章)
古谷 誠章(ふるや・のぶあき)
建築家、早稲田大学教授、NASCA主宰
1955年 東京都生まれ/1978年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1980年 早稲田大学大学院博士前期課程修了/1990年 近畿大学工学部助教授/1994年 早稲田大学理工学部助教授/1994年 NASCA設立/1997年 早稲田大学理工学部教授(現・創造理工学部教授)/2017年 日本建築学会 会長/2021年 東京建築士会 会長