台と家
設計|TOASt
第49回東京建築賞|共同住宅部門 奨励賞
ダイニングキッチン(左)と寝室(右)。
  • ダイニングキッチン(左)と寝室(右)。
  • ダイニングキッチンより寝室方向を見る。
  • ダイニングキッチン。
  • ダイニングキッチンより玄関方向を見る。
  • 「箱」と躯体の隙間。
  • 平面図
建築主:
個人
表彰建築士
事務所:
TOASt一級建築士事務所
施工:
株式会社セットアップ
所在地:
東京都中野区
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造(壁式)
階数:
地上4階
敷地面積:
489.51㎡
建築面積:
274.72㎡
延床面積:
1,098.88㎡
竣工:
2020年11月
撮影:
中山保寛写真事務所
設計趣旨:
小さな部屋に広がりをつくる箱の分散配置
 既存の間取りは和室2部屋とキッチンの2Kで、面積は約30㎡だが、躯体の天井高さが2.9mと高く、3面採光で開けた眺望をもっていた。構造体がもつ気積を最大限に活かすため、間仕切りで機能を分割する「間取り」ではなく、トイレや風呂、キッチン、収納、玄関といった住宅を成立させる機能を最小化、細分化し家具のような箱に納めて分散配置した。
 この「機能を内包した箱」は、脚で支えたり台の上に設えることで、床から持ち上げられている。この隙間の一部は設備配管のための最小限の立ち上がりになっており、通常、床下になる空間を生活のための気積として表出させている。また、天井との隙間は収納としての利用も可能な場所となっている。箱と箱の間は状況に応じて変更可能な余白のスペースとした。
 住宅の機能を家具的に扱うことで、小さな空間を最大限活用し、空間的な豊かさに転換することを目指した計画である。
(小滝 健司、高藤 万葉)
小滝 健司(おだき・たけし)写真右
TOASt
1983年 神奈川県生まれ/2007年 東京工業大学 工学部建築学科卒業/2009年 デルフト工科大学/2011年 東京工業大学大学院 修士課程修了/2011年 山本理顕設計工場/2012年 アトリエ・アンド・アイ坂本一成研究室/2018年 OAD / 小滝健司建築設計/2019年 TOASt一級建築士事務所設立
高藤 万葉(たかとう・まよ)写真左
TOASt
1994年 東京都生まれ/2016年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/2018年 同大学大学院家政学研究科住居学専攻修了/2018年 フジワラテッペイアーキテクツラボ/2019年 TOASt一級建築士事務所設立
選考評:
 築50年の35㎡RC造4階建て壁式アパートの内装全面改修。なんの変哲もない和室2Kの木軸間仕切壁と天井を撤去してワンルーム化することで、角部屋ならではのパノラミックな眺望・通風と、最上階住戸の持つ2.9mの天井高さが生み出す快適さを「発見」した設計者の目利きを評価したい。
 食器棚、クローゼット、キッチン、バスなどを床から浮遊させ「機能を内包した箱」化することで、狭小住戸に広がりを与えている。またこれらの装置のいくつかは移動可能で、限られたスペースの住まい方の工夫のための道具立てとしても機能しており、若い夫婦ならではの変幻自在な生活の舞台装置でもある。
 ミニマルではあるが決して閉じ籠らず、3方の窓が提供する西新宿の高層ビル群を臨む眺望は、この最小限住居が社会に開かれていることを示している。将来性を感じさせる若いふたりの設計者夫婦へのエールとしてここに奨励賞を送るものである。
(宮原 浩輔)
宮原 浩輔(みやはら・こうすけ)
東京都建築士事務所協会港支部、株式会社山田守建築事務所代表取締役社長
1956年鹿児島県生まれ/1981年東京工業大学建築学科卒業後、株式会社山田守建築事務所入社