立川ANNEX
設計|MDS、坂田涼太郎構造設計事務所
第49回東京建築賞|戸建住宅部門 奨励賞
西側外観。右はRC造の本棟。
  • 西側外観。右はRC造の本棟。
  • 2階リビングより北方向を見る。
  • 1階は写真スタジオとしても利用される倉庫。
  • 2階平面図
  • 南北断面パース
建築主:
個人
表彰建築士
事務所:
株式会社MDS一級建築士事務所
施工:
株式会社栄港建設
所在地:
東京都立川市
主要用途:
一戸建ての住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
304.86㎡
建築面積:
128.59㎡
延床面積:
205.74㎡
竣工:
2021年8月
撮影:
藤井 浩司/TOREAL
設計趣旨:
 隣接する縦に伸びるRC造の本棟とは対照的な、広い間口の軽やかな木造のアネックス。木架構を現しとし、1階から2階に伸びる通し柱による下部架構と、斜材が角度を変えながら母屋を支えHP面をつくる小屋組架構で構成している。1階は写真スタジオとしても利用される倉庫で、開口部を抑えた暗い空間に控えめに光が差し込む。対照的に2階は妻面を半透明のポリカーボネイトで覆い、淡い光に満たされる影のないオーナーの別宅となっている。本棟と戸建住宅群に挟まれるこのアネックスは、用途、スケール、建ち方において、いずれにも類別されない新しい風景を目指した。
(森 清敏、川村 奈津子)
森 清敏(もり・きよとし)(写真右)
MDS
1968年 静岡県生まれ/1994年 東京理科大学大学院修士課程修了/1994〜2003年 大成建設設計部/2003年 MDS共同主宰/2006年〜 日本大学、2009年〜 東京理科大学非常勤講師
日本建築士会連合会賞、東京建築士会住宅建築賞、日本建築家協会優秀建築選、日本建築学会作品選集、ほか受賞/共著に『暮らしの空間デザイン手帖』
川村 奈津子(かわむら・なつこ)(写真左)
MDS
1970年 神奈川県生まれ/1994年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業/1994〜2002年 大成建設設計部/2002年 MDS設立/2014〜22年 東洋大学非常勤講師
日本建築士会連合会賞、東京建築士会住宅建築賞、日本建築家協会優秀建築選、日本建築学会作品選集、ほか受賞/共著に『暮らしの空間デザイン手帖』
坂田 涼太郎(さかた・りょうたろう)
坂田涼太郎構造設計事務所
1973年 東京都生まれ/1997年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1999年 早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了/1999~2012年 金箱構造設計事務所/2012年 坂田涼太郎構造設計事務所設立/2016~20年 早稲田大学非常勤講師/2021年 日本構造デザイン賞ほか受賞
選考評:
 10年ほど前に応募者が設計したアパレルメーカーの本社およびオーナー住宅に隣接するアネックスである。隣のRC5階建ての本棟とは対照的に、木造2階建ての軽やかな建築としている。構造的には1、2階を貫通する通し柱に架け渡された水平梁から伸びてHP面を構成しながら母屋を支える斜材が特徴的であり、空間を印象付けている。また複数の用途地域にまたがる敷地の中で、第1種低層住居専用地域に建物をまとめることで木造を実現している点も評価できる。
 内部は1階、2階ともワンルーム空間で、1階部分は本社機能を補完する倉庫や写真スタジオとして、また2階部分はオーナーが主に別宅として利用している。
 住居として使用される2階部分は妻面を全面開口として明るい空間としながら、ポリカーボネートの中空板を採用することで、外からの視線をカットし、西日を遮りながら断熱性能を確保した快適な空間を実現している。そしてそれを単純な納まりとローコストとで実現している点は見事である。また住宅内部のつくり込みや、外構の設えなど、オーナーが自ら行っている点も特徴的である。
 半分は本社機能の一部であり、住宅部分も多目的な利用が想定されることから、審査委員会ではこれを戸建住宅として評価することについて議論もあったが、それを差し引いても余りある魅力があり、都会における別荘的住居としての新たな住まい方の提案として評価するものである。
(永池 雅人)
永池 雅人(ながいけ・まさと)
一般社団法人東京都建築士事務所協会副会長、株式会社梓設計フェロープランナー
1957年 長野県生まれ/1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、梓設計株式会社入社/現在、同社フェロープランナー